ユーザの声と自分のエゴ

商品を作る上でユーザの声を大事にすることは重要だと思います。ただユーザというのはいつも自分勝手で好きなことを言うものです。自分のメリットしか考えない。それがユーザというものであります。

あるユーザのメリットは、別のユーザのデメリットになりえます。とくに使い勝手の面でこれは多いと感じます。あるユーザが使い勝手がよいものが、別のユーザにはそうでないことがあります。あるユーザは白が良いといい、別のユーザは黒が良いという。ユーザの全ての声に耳を傾けると商品のバランスが崩れることがある。

そういう時どうすべきか?
・マーケティングデータを元に多数決をとるべきか?
・黒も白も出すべきか?
一番やっちゃいけないのはグレーで出すこと。ただ、こういうときこそ作ったものがどうしたいかを優先すべきなのではないかと思います。

ユーザの10割が黒が良いと言っても、俺は白じゃないとこの商品は認めないと思ったら白で出せば良いんだと思います。そんなとき、自分は右脳人間なのでなぜ白が良いのか論理的に説明できません。数年前、VAIOが第二章と称して黒でリスタートしようとしたとき、当時VAIOのソフトウェア部隊にいた僕は「黒いPCなんてありえない。」と心に思ったものですが、なぜ黒がだめなのかは論理的には説明できませんでした。当時の印象としては黒いPCなんてIBMが出していたし、紫の斬新さがVAIOの魅力だったのに今更黒という思いがあったような気がします。

結局黒いVAIOは起爆剤にはならず、今となっては第二章はなかったことのように丸い白いVAIOが作られています。ただ黒が売れなかったのは結果論でしかなく、だからといって白が良かったなんてことが言いたいわけではありません。黒いVAIOが良いと思ったことが誰かの直感であればそれで良いんです。

ようは作り手の直感を信じてものを出したいだけなのです。自分の直感と相反する商品を出して、それがユーザに受け入れられなかったら後悔するだけです。逆にそれでユーザの支持が得られたとしてもそれで満足でしょうか?僕は満足しません。それにユーザが要求するものをただ作ったとしてそれでユーザは満足するかもしれない、でもそれじゃユーザに感動は与えられない気がするんです。

ユーザに感動を与えるためにはユーザの要求を超える必要があります。そのためにはユーザの声だけに耳を傾けていてもだめ。自分の感性を常に磨き、自分の直感を信じてものを作る。

自分はエンジニアではなく、クリエータでありたいと常々思っています。