カラーコーディネーター2級

2010/06に受験した時に2007/02/10の第2版のテキストを要約するという勉強法をした産物。

カラーコーディネーター2級

1章 カラーコーディネーションの意義

色彩の情緒性と識別性

  • 色彩には情緒性識別性(視認性,誘目性)の二つの大きな心理的側面がある
  • 情緒性とは色彩によって様々な感情を持つことであり、澄み渡った青空、新緑の緑、可憐な花、沈みゆく太陽のような自然の色彩や、協会のステンドグラスや寺社の尊厳な装飾美に心をうつことである
  • 情緒性にかかわる心理的側面については「力量性」「活動性」「評価性」の3つがあることが知られており、好き嫌いを表す評価性は対象者の性や年齢、あるいは時代性などによって違いが生まれることが多い
  • 色彩の識別性とは「人が色が異なることによって物の存在や状態を認識できる」ことであり、色彩の視認性誘目性は識別性の範疇であり交通標識などの安全色彩で使わられる

  • 視認性はその対象の存在または形状の見えやすさの程度を意味し、逆に視認性を低くことを利用したものに迷彩色などがある

  • 誘目性とは多数の対象が存在する場合に、どの色がより知覚されやすいのかの程度で、商品の陳列などで利用される
  • 色彩を施す対象物の違いによって、情緒性を優先するか、識別性を優先するか検討する必要がある、例えば服飾製品の多くは色彩の情緒性を、交通標識類は識別性を優先する

  • 色彩が自由に使えない時代もあった、例えば日本での冠位十二階の制や、大宝律令による当色や禁色、江戸時代の贅沢禁止令などで、この禁色とは朝廷の許可をを得なければ使用できない色のことを指す

  • 色彩が一般の人々にも解放され自由な創造性を表現するためのものになったのは欧州ではルネッサンス以降といわれている
  • 古代人にとって色彩とは宇宙であり天上であり神を示すものでもあり、創造的な伝統はここ600年の歴史に過ぎない

カラーコーディネーションに求められる基本的要素

  • カラーコーディネーターが配色作業に求めらる際の主題となる要素は常に全体像を把握することで、色彩の2つの側面である感性理論の双方からバランスをとる
  • カラーコーディネーターに求められる能力はまず全体調和をもたらすこと
  • 場、用途、人、意味、美の5つの要素を「物」に即して同時に扱う
  • 物に大してどのような色彩がつかわれているかといった市場調査やその中で利用者を性向タイプに分ける客層調査を行うことが必要
  • 場については、野外であれば耐久性が要求される材料や顔料を選択する
  • 娯楽性の強いものでは社会的な意味合いが強くても色彩の自由度は高い(玩具やレジャー、乗用車など)
  • 社会性の高いものでは色彩の情緒性に重きを置いた色彩施策が主体になる(公共の外観など)
  • 実用性が求められる場合は機能性や低コストなどが要求される
  • 幼年期の色彩経験はその後に影響を及ぼすため、いたずらに強い刺激をあたえるべきではない
  • 非健常者の場合は安全性に配慮した識別性の高い色彩設計や精神的な安定や健康を促進できるような色彩的配慮がもとめられる
  • 年齢や性向別によって人を区分することをセグメンテーションという
  • 一般に毒性が低く、耐久性や退色性に優れた色は高価になる
  • 色は象徴性や文化、あるいは時代性をも表現し、それが洗練されることで様式美を構成していくこともある
  • 物につける色彩はコーディネータ個人にとっての存在ではなく社会的な存在でもある
  • 色彩の美的センスは完成の一分であるが、そのセンスや発想を磨くためには、実際の物に多く出会い美的感受性を養わなければならない、しかし一方で色彩調和論やその他の理論に精通することで、自らの美的表現に新たな視点が加わる

商業行為における活用と考慮事項

コミニケーションの媒体としての色彩

  • 商業行為においては色彩の識別性情緒性をいかにして展開させるか、識別性は対象物のイメージを形成し、商品の購買量にも影響を与える
  • 色彩の誘目性という、人目を引き、その対象物の存在を際立たせる効果を利用する
  • 食品パッケージなど同類のものが並べられる場合は必ずしも高彩度色が目立つとは限らず、置かれる周囲の製品を考慮する必要がある
  • 対象物の意味、思想を統合し他者に知らせる効果
  • CI(コーポレートアイデンティティ)カラーとして特定の色彩が使われることがよくある
  • 色彩には以下のような効果がある
    • 低コストで商品の新規性を訴求できる効果
    • 対象物の感覚的な訴求力をコントロールできる効果
    • 流行形成の効果

表色系

  • 低彩度領域の把握ではマンセル表色系が有効
  • 色が特定の領域に集中する場合には**Lab***標識などを使う
  • 商業行為における色彩の役割は色彩の特質である情緒性識別性という相反するような性質を深く展開させたもの

  • カラーコーディネーターが配色を施す業務には生産された商品が計画通りにできあがるか否かを管理することまでもとめられる

  • 厳密な色彩の管理を行う場合は、XYZ表色系や色差を測定するLab*表色系が用いられる、カラーオーダーシステム系であるマンセル表色系やオスワルト表色系では不充分とされる

カラーコーディネーターの実務

  • 発想段階での見本帳にはヒューアンドトーンシステムを使うのが有効であり、色指定段階では色数の豊富さと視覚効果に富んだ現物が求められる
  1. 現状の把握
    • 商品投入市場の現状調査
  2. 色彩の発想
    • 量を前提するか、質を前提とするか
    • 環境計画では安全色などの規制もあり、法的基準の準拠も考慮しないといけない
  3. 実施案の制作
    • 暖色系を美しく演出するには、白熱電球などの色温度の低い証明を使う、寒色系には色温度の高い蛍光灯を使うなど
    • 色彩の候補がそろった段階で、発色特性の可否、強度、耐候性退色性色の堅ろう度といった物理的耐性や、毒性、安全性などが基準を満たすかなど試験を行う
    • SD法や一対比較法などによる心理測定など消費者を対象にした評価調査を行うことが多い
  4. 実施と管理
    • 材料などが計画指示どおりに生産されるかを管理
    • 交換しても元の色と同じ色彩になるか
  5. 演出および評価と問題点の把握
    • 店頭を飾る商品では店頭演出を行わなければならない
    • 視覚的に美しく提示するという意味でビジュアルプレゼンテーションを施す
    • 演出を前提として商品化計画という意味を持ってビジュアルマーチャンダイジングと呼ぶ
    • 都市景観や店舗づくりでは証明計画も重要な位置づけにある

2章 色彩の歴史的発展と現状

色彩科学の歴史的展開

  • 色彩に関する歴史は古いがそれは理論化よりも実際の使用が先にあった
  • 前五世紀ごろエンペドクレスは目にあるから一種の光が発せられて対象物が見えるとした
  • 前四世紀ごろデモクリトスは、白、黒、赤、緑の4素色から他の色ができると考えた
  • 前三世紀ごろ古代ギリシャの哲学者アリストテレスはすべての有彩色を白と黒の間に位置づけたが、その色彩理論はルネサンス時代を超えてヨーロッパにとどまり続けた
  • 虹を理論付け、白、黄、赤、緑、青、紫、黒の7色を系列した
  • 虹は古代中国では竜の化身であり、主虹と副虹より雌雄があるとされていた
  • 副虹は主虹の外側に45度の円を描いて現れる、色の順序が逆で副虹は水滴内で2回反射されて見えるものであるため
  • アレキサンダーが記述したことから主虹と副虹の間は周囲の空より暗くアレキサンダーの暗帯と呼ぶ
  • 今日では虹は水の屈折率の波長依存性によって説明できる

ニュートン光学

  • 色彩学におけるニュートンの功績は太陽光のスペクトル分析に加え、光線には色はついておらず、人間の視覚的な機能側に色の感覚を起こす能力と性質があると指摘した点
  • つまり色は物理世界の存在を超える心理的な存在でもあると明記したこと
  • それまでアリストテレスはどちらかというと色彩理論より眼の解剖学的研究に成果があった

ゲーテの色彩論

  • ゲーテの色彩論は白と黒の間に色彩がうまれるアリストテレスの考えを認めるものだったが、一方でニュートンの否定があるため科学者より受け入れが拒まれていた
  • しかしゲーテの眼に根拠を置く研究方法により現在の感覚心理学にあたる色彩現象が見いだされた
  • ゲーテの研究はその後のドイツの色彩工業規格やオストワルトの色彩学研究に多大に影響を与えた

光の物理的本質に関する論争

波動説(ホイヘンス)->粒子説(ニュートン)->波動説(ヤング・フレネル)->電磁波(マクスウェル)->波動+粒子(アインシュタイン)

ホイヘンス

  • オランダのホイヘンスは光の反射、屈折、複屈折などが説明できる光の波動説の基礎をつくった
  • ホイヘンスの波動説はニュートンの粒子説以降は低調していたが、19世紀になってイギリスのヤングとフランスのフレネルがこの波動説を唱えたことで転機を迎えた

ニュートン

  • ニュートンは著書「光学」で光は多種類の単色光を合成したもので、有彩色は光の改変によるものではなく単に合成比率を変えることで生じることを明らかにして、光が粒子説という性質をもつことを説いた

ヤングフレネル

  • ヤング偏光の現象から光は横波であるとした
  • フレネルは干渉、回折の現象を波動説で説明し、媒質の境界面における偏光の反射率を導いた

マクスウェル

  • 続いてスコットランドのマクスウェルが電磁波理論を定式化して、光は電磁波の一種であると結論した

アインシュタイン

  • さらに光電効果を生じうる単色性の最小値などから光の量子性が認められ、ドイツの理論物理学者のプランクが示した光の最小単位である光量子からアインシュタイン光量子仮説の中で光は波動と粒子の二重性を持つと定義した
  • アインシュタイン光量子仮説では波動数ν(ニュー)の電磁波はhνのエネルギーを持つ量子として振舞うと光子(photon)を定義した
  • 色彩学では多くの場合は粒子性では重要ではなく波動性を考えるだけでよい

色と眼

  • イギリスのヤングとドイツのヘルムホルツが三原色説の提唱者であることからヤングーヘルムホルムの三原色説がある。これは赤、緑、青の3原色の加法混色で他の色は実現できるという説。
  • ドイツのヘリングはすべての色相は赤み、緑み、黄み、青みの4つの組み合わせで表現でき、これに白みと黒みを加えるとすべての色が表現できるとした
  • ヘリングの説は基本色が4つであることから4原色説ともいわれる、正しくは[赤・緑]、[黄・青]、[白・黒]の3(対の)反対色説(ヘリングの三反対色説)という
  • 実際のところ視細胞(錐状体)レベルでは3色型、水平細胞レベルでは4色型で、人間の視覚系でいえば3原則、4原色のどちらの説も機能する
  • 視細胞には明るいところで機能し色を見るのに関与するが感度の低い錐状体と、暗いところで機能し、色覚に関係しない(白黒)が感度が高い杆状体がある
  • 人間の色覚系に近いコイや金魚に微小電極を差し込んでの基本感光曲線の解明が行われた、しかし錐状体には正確に電極を打ち込むことはできなかった。しかし副次的結果として反対色説が裏付けられた

ケーニッヒ

  • ケーニッヒは三原色説のヘルムホルムの弟子で生物学者
  • 三原色説からすると眼に三原色の応答が見つかるのが望ましく、観測者の眼に適当な色情報を与え、それに対する種々の反応から眼のなかにある基本的な分光感度を推定する組織的な実験を最初に行った
  • ケーニッヒは1886年にほぼ完成した実験結果を1893年に長大な論文にして発表した
  • 正常色覚者二人の他に色覚異常の実験者を揃え、実験方法を訓練した上でそれぞれの基本感光光線を測定した
  • 測定装置はヘルムホルツが残したものを使い、電球が発明されるまえは、特定のガスマントルを光源に用いた

富田教授マークス

  • 光による錐状体の活動を直接測定したのは富田教授とアメリカのマークスであり、網膜の中でヤングーヘルムホルツ説を確認した。二人は同じような時期に同じような結果を得ただけで共同研究者ではない

CIE表色系の確立

  • CIEとは1913年に設立された国際証照明委員会で、照明、光、色などの技術上の基礎問題における国際協調を図ることを目的としたで民間の国際団体であ
  • CIEが最初に行った重要な国際決定は、1924年の測光標準観測者の分光感度曲線である分光視感光率の決定である、分光視感光率の測定とは電磁波である380nm->780nmまでの可視光線が人間の眼に入ったときに引き起こす明るさの感覚の違いについて、その効果を定量的に決め、感覚的な明るさを物理的な量として表すものであった
  • CIE表色系といえばXYZ, X10Y10Z10表色系や、色差を表すLabや、Luvなどがある

XYZ表色系

  • XYZ表色系は1931年に承認、1950年には10度視野の対応へ
  • XYZ表色系の前はRGBで表現していた、ギルドとライトは多少異なった実際の混色に用いる三原則RGBを持つ装置を用いて種々のスペクトル単色光に等色する混色実験を行った、ギルドとライトの研究の観測者平均値を淡色を原刺激とし、等エネルギー白色光を基礎刺激としてその目盛り定めをする座標に変換すると、両者は実験誤差の範囲内で一地するので両者の平均値をRGB系の等色関数とした
  • RGBの光線の反応のデータは等色関数にも色度座標にも負になる部分があって、それがわかりにくいため、XYZ表色にした
  • XYZ表色系は光と色の物理学の知識に、生理学的知識を組み合わせて、任意の色感覚を物理的に規定したは3つの原刺激の混色量によって表す体系なので混色系とも呼ぶ(光の混色系と言える、対してカラーオーダーシステムのことを顕色系と呼ぶ)、この表示に用いる諸量は心理物理量という
  • XYZ表色系は順位づけなどで視感判定と一致し、精密に計算ができるということで利用範囲を広げていた
  • その後1950年に白色顔料の酸化チタンの白さの判定で視感判定と分光測色結果が矛盾するという新たな問題が出てきたので10度視野が採用されることになった(X10Y10Z10)
  • XYZでは色差の感覚は表示できず、その線形変換では限界があり、非線形変換を含むLab*表色系にもまだ改良の余地があり現在も研究中だが、線形変換だけでも住む範囲は高原演色性評価などで実用されている

混色系と顕色系

  • 色を表示する方法には色感覚に基礎を置く混色系と、色知覚に基礎を置く顕色系と呼ばれる方法がある

混色系

  • 混色系はある色と等色するのに必要な色光の混合量を求める光の混合実験に基づいたもの
  • 色刺激関数等色関数とで求める三刺激値など心理物理量で表す方法

  • XYZ表色系など

顕色系

  • 顕色系はカラーオーダーシステムとも呼ばれ、混色系よりも歴史は古く、色票など物体標準の色の見えに基づいたもので、心理的概念で色を表すものである
  • カラーオーダシステムは大きくわけると3つのグループにわけられる
  1. 回転円盤に面積の異なる二色の色紙を貼りつけ回転させると中間混色により混色した色に見える、この二色の色紙の面積の比率を系統的に変化させてつくられた色を、絵の具で等色して色票集を作成するもの(オストワルトシステムなど)
  2. 使用される染料や顔料を系統的に変化させながら混色させて色票集をつくったもの
  3. 人間の色知覚の特性を秩序立てて表すように色票を配列したもの(マンセルシステム、NCS、PCCSなど)

マンセル表色系

  • 色を定量的に表す体系である表色系の1つで、色彩を色の三属性である、色相(ヒュー)、明度(バリュー)、彩度(クロマ)によって表現する
  • 色相(ヒュー)は主要5色相を決め、明度(バリュー)は完全黒を0とし、完全白を10とするように感覚的に均等に並べてスケールとした
  • 彩度(クロマ)は色みを感じない無彩色を0として、すべての色相(ヒュー)、すべての明度(バリュー)について彩度の感覚に比例した目盛りづけをすることを目標とした、このため色相(ヒュー)ごとに最大彩度になる純色の位置が一致せず、例えば黄色の最大彩度になる純色は赤色のそれよりも明るく、鮮やかさはやや低いことになる
  • 色のものさしの目的として物理的尺度と心理的尺度を対応させた表色系がXYZ表色系マンセル表色系である
  • カラーリサーチで使われる

オストワルト表色系

  • ノーベル賞受賞者のオストワルトのもので、特徴はさまざまな色は完全色(純色)と白色と黒色の比率混合であると考えたこと
  • 光の色には明暗があり、物の色には白黒があるということから灰色の系列を軸にした色票である
  • オストワルトシステムは回転円盤上で面積の異なる2色の色紙を回転されると人間の眼には別々ではなく混色されて見える原理を利用し、その面積の比率を混色の比率として比率を系統的に変化させて作成した色を絵の具で等色して色票帳を作成する

NCS(Natural Color System)

  • 1970年代末にスウェーデンのボルド、シヴィック、トンキストらによって提案されたカラーオーダーシステムがNCS表色系である
  • NCS表色系の特徴はオストワルト表色系やマンセル表色系と違い、本質的に標準色票を必要としないところで、ヘリングの反対説に基づく、色相黒み色みによって色を表す
  • 色相はへリングの4基本色のR,Y,G,Bのうち隣りあった2色相を心理的に含む比率で表す、例えばYが40%、Rが60%のオレンジの色相の場合はY60Rと表す、次に試料色お心理量成分白み(w)、黒み(s)、色み(c)を総和が100になるように評価し、それらが30,50,20であれば、黒み(s)と色み(c)だけを二桁ずつ連続して5020のように記す、この色は全体として5020-Y60Rのように表現する
  • NCSの立方体の形はオストワルト表色系と同じであるが、その色相区分や同一色相面内の区分の意味が異なる
  • 欧州では普及しており、心理物理量ではなく直接心理量を表現して、色名区分などとも相性がよく、CIE表色系との関連もあきらかにされているものとして注目されている

近代デザインと色彩

アーツアンドクラフツ運動

  • 近代デザインの父と呼ばれるウィリアム・モリスは19世紀後半から活躍した装飾デザイナーで画家・詩人でもある
  • モリスはイギリスを発端とした産業革命による機械主義に反発し、植物をモチーフとした作品の中で自然主義の姿勢を貫き、芸術と工芸の一致を提唱する、アーツアンドクラフツ運動を誕生させる
  • モリスが新居を赤い家として建設し、インテリアもすべてデザインしたことは生活全般にわたる道具を総合的にデザインするということを明確にした
  • モリスは植物の色彩を再現するために植物染料がもつ色彩調和を重視し、染料の研究を行い、特にインディゴブルーの再現に力を入れた
  • モリスの後期の作品ではインディゴブルーによる「いちごの盗人」「らっぱ水仙」など多色の派手な作品が多くなり、植物染料の研究結果による美しい色彩調和を完成させている

アールヌーボー

  • アールヌーボーは新しい芸術の意味で19世紀末の美術・デザイン様式全体の名前になる
  • アールヌーボーは機械主義の反動として、人間の創造力、手仕事の復活を目的とした混沌としたビクトリア様式に対する最初の統一スタイルの生活デザイン
  • アールヌーボーの特徴は生活デザインすべての範疇に手工芸的曲線が支配したこと。しかし、当時はやりすぎで病的世紀末的な雰囲気が災いしてポスター以外は成功しなかった。
  • 装飾家のウイリアム。モリス、オーブリ・ビアズレー、パリ派のエッフェル・ギマール、ロートレックなどの芸術家がアール・ヌーボー様式を代表する
  • ベルギーの建築家、ヴァン・デ・ヴェルデ、ヴィクトール・オルタ、オーストラリアではクリムト、オブリスト、スペインのアントニオ・ガウディなどの建築家・デザイナーが活躍した
  • 色彩としては、黄色(狂気を象徴する)、紫(イギリスのパーキンの合成染料モーブの発見による)など病的な雰囲気な色と同時に白、黒の無彩色系が中心
  • 90年代には黄色が多用されるイエローナインティーズと命名される時代であった
  • イエローナインティーズの時代は同時にビアズレーの時代とも言われる、これはビアズレーが美術主任として担当した文芸誌「イエローブック」の色としてビアズレーと結びついている
  • 画家ではゴーギャンやゴッホの黄色使い、ロートレックの「ムーランリュージュ」、ヤン・トーロップの「デルフトサラダドレッシング」、ヴァン・デ・ヴェルデの「トロポン食品会社」、ミュシャの「メデ」などがメインカラーで黄色を使った
  • 暗い写実的な絵を描いていたゴッホは、プロヴァンス地方の光り輝く太陽や明るい風土色に深く感銘を受け、自分の絵画に豊かな色彩を加えることになった
  • 紫はパーキンスモーブに代表される、これはパーキンがキニーネ合成の実験過程で偶然モーブ色の生成に発見したものでモーブは人類が初めて手にした合成染料である
  • 世紀末は黒と白の時代で、黒に関しては日本の浮世絵や水墨画なども影響をあたえている

プレモダン

  • プレモダンでは4つの芸術革新的流れがあった
    1. グラスゴー派
    • グラスゴー派は建築家マッキントッシュを中心にしたグループでアールヌーボー風の曲線を利用しながら立体的要素と幾何学的・直線的形態の統合を図り近代建築デザインの創始者となった。有彩色は少なく白い空間に黒のステイン仕上げの家具といったものが多い
    1. ゼツェッシオン
    • ウィーンで興った芸術家の改革運動で従来のアカデミズムな造形主義からのゼツェッシオン(分離)が提唱され、用と美の調和を図り、幾何学的な形態の造形を推進、色彩では白と青を使用した斬新なデザインが注目された
    • ホフマンのデザインでは白い空間に黒の家具を配置するデザインが特徴的である
    1. ドイツ工作連盟
    • ドイツ工作連盟は1907年ベルギーの建築家ヴァン・デ・ヴェルデ、ヘルマン・ムテジュウスラニヨルもので、機械生産の合理性の中に新しい美の基準を見出すデザインの自立を提唱。
    • 使われた色彩はオレンジや紫など豊かな配色を重視したものになっている
    • ヴェルデがモリスに傾倒し、芸術と機械の一致を目指したがまだアールヌーボー的感性が強く残っている
    1. デ・スティル
    • オランダで起きたデ・スティルは1917-18年に抽象画家ドースブルグ、モンドリアン、建築家ヘリッデ・ステイルらが中心となった運動で絵画、彫刻、建築、都市計画まで幅広い分野で新しい造形理論を社会に対して提案することを試み、形態としては垂直線と水平線の交差するもので色彩においては赤、青、黄の3原色を主張した。この三原色で表現されるところに宇宙の秩序と定理があると主張した
  • メキシコの建築家ルイス・バラガンは「情熱に訴える建築」の表現のために鮮やかで澄んだ色彩を生かした建築を多く設計しており、ルイス・バラガンデ・スティルの新造形派が好んだ構成的な方法を用い、極めて限定されたシンプルな建築要素によって、豊富な情感のある建築空間を作り出した
  • ルイス・バラガンの使う強い高彩度の色彩は、ルイス・バラガンが作り出す建築空間の中では、抑制のきいた、むしろ静的な印象をもっている、またルイス・バラガンが使う色彩の表面は平滑ではなく細かな凸凹があり、豊潤な素材感がありどっしりとした存在感がある、そしてルイス・バラガンの色彩はメキシコの陽光の下でこそ映える

アールデコ

  • アールデコとは装飾美術の意味で、1925年パリで開催された「装飾美術・工業美術万国博覧会」においてこの様式が頂点に達したため、1925年様とも呼ばれる
  • アールデコは機会主義に端を発した近代デザイン運動と世界各国の民族美術が混合した複合的デザイン様式である
  • アールヌーボーの手工芸的曲線とは異なり鋭角的、直線的な形態を特徴としている
  • アールデコとして原色の強い野獣派、バレエ・リュスのスラブ調の原色使いなど、くすんだアールヌーボーの色彩に馴染んでいたヨーロッパを圧倒した
  • 野獣派ではアンリ・マチスの[マチス夫人]、アンリ・マンギャンの[サントロペのパリ祭り]、ローベル・ドローネの[赤のエッフェル塔]などの強烈な原色使いがある
  • アンリ・マチスの[マチス夫人]、ローベル・ドローネの[赤のエッフェル塔]などの作品は、対象を形態ではなく作者が感応した強烈な原色によって再構成しようとする新しい試みであった
  • ローベル・ドローネの婦人ソニア・ドローネは赤、青、黄などの鮮やかな原色を駆使して、短形、三角、円形などの幾何学的で斬新なコスチューム・デザインやテキスタイル・デザインを発表している-ラウル・デュフィーも染職デザインを手掛け、「楽園のなかの散歩」などでソニア・ドローネと同様に華麗なテキスタイル・デザインを創造した
  • アールデコを代表するガラス工芸家ルネ・ラリックはオレンジ(フォルモーズ)、緑(ミラノ)などの鮮やかな色彩を使ったオパールセントのツボを発表している
  • 日本の漆工芸品水墨画、アフリカから影響を受けた黒はヨーロッパで衝撃を与え、アバンギャルドを象徴する色となり、ファッション界でもガブリエル・ココ・シャネルがとりあげ流行色となった
  • 速力、動感、騒乱から美を創造するという未来派宣言は、スピード、ダイナミック、力強さというアールデコ様式の基本的造形理念を作り上げた。その象徴都市はニューヨークであり、クライスラービル、RCAビル、ロックフェラーセンタービルなどがあげられる
  • マイアミビーチで別名トロピカルデコという独特の発展を遂げており、アールデコ風の半円形の造形に淡いパステルカラーが採用されている
  • フランス生まれのレイモンドは最初のインダストリアルデザイナーでアメリカに移住し事務所を開設。複写機や冷蔵庫をリデザインした。以後、たばこのラッキーストライク、コカコーラーの自販機、ジュークボックスなどでコントラストの明確な色彩、シンプルな形態を表現し、生活環境にモダンデザインというユートピア社会を出現させた
  • ロシアの画家のカシミール・マレーヴィッチは重力と速度の運動方向に基づく構成を重視し、シュプレマティスム(絶対主義)を提唱した

モダンデザイン

  • モダンデザインは大量生産システム、規格化、合理化などの動向を背景にして出現したスタイルである
  • モダンデザインの契機は1919年のドイツのバウハウス造形学校の設立であり、1925年の「装飾美術・工業美術万国博覧会」のレスプリヌーボーもそのきっかけである
  • 武器の規格化を契機として、時計、農業用機械、ミシン、タイプライター、カメラ、自動車などの機械生産に大きな影響を与える
  • 1908年にはヘンリー・フォードが黒のT型フォードを生産するが、これは乾燥が速く効率的であることからを採用している
  • 西欧ではドイツ工作連盟のヘルマン・ムテジュウスやオーストリアのアドルフ・ロースなどの建築家・デザイナーたちが機械生産における量産品と芸術の一致(図形や装飾性の排除)を提唱し新しい機械美学の探求の必要性を主張した
  • 以後工業と芸術の調和を目的とする様々なデザイン運動がおこる、形態的には装飾系の排除といった方向があった

デッサウ・バウハウス

  • ドイツのクロピュウスはアーツクラフツ運動に触発され、史上初の建築・デザインの総合的造形学校バウハウスを設立する、クロピュウスが設計したデッサウ・バウハウスはいくつかの直方体が直行したガラスと鉄筋による無機質な建築物であり、その室内には家具部門のマルセル・ブロイアーが設計した黒革とスチールのシンプルなワシリーチェアがおかれた
  • クロピュウスは建築とデザインの統合を試みたが初期的段階において表現主義的造形手法を採用し、芸術至上主義のヨハネス・イッテンを招へいした
  • イッテンは独自の色彩調和論を展開し実践し、著書「色彩の芸術」のなかで「色彩の美しさとそのなかに潜在しているものを許容し、理解することができるのは色彩を愛している人たちだけである。色はすべての人にとって役立つものだけれど、色を熱愛する人だけにその深い神秘を表すだろう」と述べた
  • バウハウスは1925年に政治的弾圧をうけ移転、また教育利点の相違からイッテンは去ることになった。以降、クロピュウスはデ・スティルとロシア構成主義より色彩は二義的存在に変化した
  • 織物部門のマイスターであったグンタ・シュテルツは鮮やかな色彩を駆使したバウハウスというタペストリーをつくった

ル・コルビュジュの乳白色

  • スイス出身でフランスの建築家のル・コルビュジュは住居は人が住むための機械であると述べ、装飾の排除と石灰乳(白)を提案した。1925年にはレスプリヌーボー館を設計し思想を明確にした。が1930年以降は多色の表現主義的建築に回帰する

アメリカンモダンと色彩

  • アメリカのモダン・デザインの先駆者としてインダストリアルデザイナーのレイモンド・ローウィとヘンリードレファスがいる
  • レイモンドの内部機構をむき出しにした複写機や冷蔵庫の外観をすっきりされるなどリデザインをした
  • レイモンドのた紺色と金色の鳩によるたばこピースの箱、赤と白のコカコーラーのデザインも有名でシンプルな形態とコンストラストのある配色の作品
  • レイモンドはシベリア鉄道のために流線的な機関車をデザインし、同じく流線型の自動車であるシュードベイカーを発表。これが戦後の自動車デザインに大きな影響を与えている
  • レイモンド・ローウィは著書「口紅から機関車まで」の題名でわかるように広範囲な工業製品を手がけたが、そこでレイモンドは工業製品の機能と美的感覚の一致を提唱し、産業デザインの普及に大きな役割を果たした
  • ヘンリー・ドレファスもまたアメリカン・モダンの旗手で、300型卓上セットの電話機をリデザインした、他にコダックカメラやコーヒーメーカも発表した
  • ドレファスは人間工学的心理学的な視点からのデザインを提案
  • マレーヴィッチの信奉者だったアレキサンドル・ロドチェンコはマレーヴィッチを批判し、イーゼル絵画を放棄して構成主義を提唱、空間構成を経て多彩な才能を発揮、赤・黒などコントラストの強いスラブ的色彩を駆使した作品を作り上げた。キュービックやモンタージュ性はバウハウスやモダンデザインに大きな影響を与えた
  • エル・リシツキーもマレーヴィッチに影響をうけ、構成的な建築などを制作。ベルリン万国博覧会のプラウンルームは絶対主義的インテリアデザインとして高い評価を得た
  • 北欧諸国では伝統的な手工芸と近代デザインが調査した北欧独特のモダン様式が展開され、有機的なぬくもりをもつ高品質の北欧モダンの生活家具がうまれた

ポストモダン

  • モダンデザイン後の整理として1978年にイギリスの建築家チャールズ・ジェンクスが用いた言葉としてポストモダンという
  • モダンデザインのある種、禁欲的な傾向に対する反発から、モダンデザインが肯定した機械や便利性、合理性を否定し色彩や形態を機能として捉え直した
  • ポストモダンのデザイナーたちは色彩がデザインの根源的要素を形成すると主張し、大胆な色彩が建築にも見られるようになった
  • イタリアの建築家のエットレー・ソットサスはメンフィスの主宰者。オリベッティ社のデザイナーとして明るい軽やかな色彩で楽しさとヒューマティックな魅力を表現した
  • ソットサスは色を充てがうことがデザインを形成する根源的な要素であると主張した。その後、ウルフ邸、カールトン、ウェストサイドチェア、イーストサイドチェアなど色調鮮やかな作品を作り出している
  • イタリア人建築家のレンゾ・ピアノはジョルジュ・ポンピドー国立美術文化センターを設計、奇抜さと革新性でポストモダンの旗手となった。他に、ディバウ文化センター、ジェノバの駅舎、関西国際空港などを発表している
  • イタリア人のアルド・ロッシは1986年にアレッシー社からメタルカラーのコーヒーメーカーシリーズを、1988年にはミラノに外観をイエロー、レッド、ブルーに彩色した「新パラスポーツ・プロジェクト」を発表した
  • イタリア人のヴィコ・マジストレッティの真紅のリクライニングシートの「ヴェランダ・チェア」(1983年)などイタリア・デザインはカラフルで楽しい作品にあふれている
  • フランス人建築家のフィリップ・スタルクはポスト・モダン建築家の一人で、建築物では各フロアがユニークな形態と色彩で彩られた香港の「ペニンシュラ・ホテル」やニューヨークの「ロイアルトン・ホテル」、東京・隅田川沿いの「スーパー・ドライ・ホール」などがある、建築物以外では、黄、オレンジなどカラフルな「カメレオン・チェア」色の独特な形態をしたレモンしぼり器などがある
  • 1967年、色彩復活の潮流の一貫として極めて彩度の高いサイケデリックカラー、ヒッピーカラーが登場した
  • サイケデリックカラーはLSDや大麻などの幻覚作用で体験できるきわめて彩度の高い蛍光色であり、イラストレーターのピーター・マックス、横尾忠則、栗津などが利用、イギリスのビートルズをモデルにしたアニメ映画のイエローサブマリンで頂点に達した
  • アメリカの建築家ロバート・ベンチューリはモダン・デザインの推進者の一人ミース・ファン・デル・ローエの「Less is more」をもじって「Less is bore」と反発した、そして著書「建築の多様性と対立性」の中でル・コルビュジェの禁欲的建築言語ビューリズムを批判して、建築における多様性と対立性の重要性を説き、また実践した
  • ロバート・ベンチューリの「お母さんの家」はポストモダン建築の古典として高い評価を得ており、この「お母さんの家」の色彩では色彩分割によって室内の特徴を強調した意図が見える
  • ロバート・ベンチューリの建築の多様性対立性の文章を引用すると、「色調は天井は明るく、床は中間色で、壁は床から5フィートの高さまでは中間色、上が明色で塗り分けた、色相に関しては内部は等和色で楽しい雰囲気を持っているが、力強さもある。外部は内部と違えて、外の看板の色にしても内部で使った色とは無関係な色に決めた、それはあでやかな原色である、ファサードの右側は青、左側は黄に塗ることにより既存の建物の二重性を浮き立たせている」
  • ギルドハウスや、クイーンアンチェア、チッペンデールチェアなどカラフルな色彩で多様性、対立性を表現している
  • 日本の建築家では安藤忠雄が「光の教会」や「本福寺水御堂」をはじめ、さまざまな建築物でコンクリート打ちっぱなしによるグレーの空間に光や色彩を取り込んだ独特の空間を構築している

民族と色彩

  • 国旗は民族が背景としてもっている象徴を表している場合が多く、例えば身体の色、風土宗教、神話、芸術、嗜好色などを色濃く反映してできあがっている

北方

  • 北方では日光の照射率が低く、降雪の多いところから水、青、黄、白などが好まれる
  • ノルマン人族の身体的特徴としての金、青、白がある
  • ノルマン民族の人々にはキリスト教以前は土着の太陽信仰が流布していたため、太陽の色であるオレンジへの情景がある
  • スラブ民族にはロシア文化が色濃く反映している
  • イコン(キリストなどの板画)には金色の背景に黒が使われる
  • ロシア・バレエ団の原色使い文化的衝撃を与えアールデコの色彩の規範となる
  • 旧ソビエトの共産主義のはシンボルで、ロシアの三色旗にまだ残っている

ヨーロッパ

  • ゲルマン民族は森林民族で、緑に対する情景がうかがいしれる、住居には緑がベースカラーなので調和する茶色などの煉瓦が使われる
  • イギリスは11世紀の十字軍遠征の際に敵味方を区別するため紋章や旗がつくられた。紋章には厳しい色彩規定があり、金銀の金属色から一色、赤・橙・黄・緑などの原色から一色を必ず使用することを規定している、ただし金色は黄色、銀色は白色で代用することができた
  • イギリスは紋章の国であり、王室の赤、黄、黒の獅子の紋章は有名
  • チャールズ一世が権力のシンボルとして緋色を選んだことや、世襲君主の戴冠式に着用するスカーレットのローブ、議会の赤い絨毯などはに対する畏敬の念を表す
  • 青は抵抗を表す色でもある。ローマ軍が侵攻した際に古代ブリトン人が体を藍色に塗って戦った故事があり、また青を最高の栄誉の意味とし教養のある夫人を青踏派と呼んだりもする、事実イギリスにはケンブリッジブルー、オックスフォードブルー、ネービーブルーなどブルーに関する色名が多い
  • スコットランド高地人の紋章であるタータンチェックからなる、タータンチェックとは経糸と緯糸の色糸よる組み合わせで表現した綾織物の格子柄で、格子と色の組み合わせによって、それぞれの紋章を再現した、タータンチェックには家柄を表すクラス・タータン、狩猟の際に着る保護色を使用したハンティング・タータン、王家を表すロイヤル・タータン、喪に服するときに着る白と黒のモーニング・タータンなどがある
  • イタリアでは、赤、白、緑が国旗に使われる、緑は森林、白は自由、赤は独立戦争で流した人民の血を象徴する
  • スペインのマジョリカ陶器の主調色はベージュから黄褐色、
  • フランク民族に見られる色彩で特徴的な色は、フランス国旗に見る三色旗の色、ロココ時代のピンク色、太陽に輝くプロヴァンスの黄色などがある
  • フランスではは王家の色として禁色にしており、以後青が影響を持ち国旗は青、白、赤になる
  • 18世紀のフランスでルイ14世や15世によるルイ王朝の絶対王権が確立して、貴婦人たちを中心に女性サロン社会が形成。ルイ15世の愛妾であったポンパドール夫人ロココ様式の完成に寄与、女性社会にピンクが流行した。セーブル磁器においても科学者のエローが独自のピンクを開発、これをポンパドールピンクと命名し人気を集めた
  • 南フランスではゴッホの描いたひまわりのように太陽の黄色が風土色になる
  • 地中海付近では白や青が風土色である
  • 西洋社会では東洋に対する情景から中国や日本の磁器を輸入し、あちこちで模した陶器が作られている。その中でもオランダの地方都市で開発され、ヨーロッパ中に輸出され人気になったものをデルフト焼という
  • 中世ヨーロッパで盛んに描かれた金色の背景に、青・黒・赤の衣の聖母マリアや聖徒たちが描かれた版画で10世紀にロシアがギリシャ正教を国教としてから本格的に発達したものはイコンである
  • 西洋では黄色は特に1945年までは嫌われていた、一説にはキリストを裏切ったユダが赤毛で黄色い服を着ていたからという説がある

アフリカ、南米、東南アジア

  • オアシスは遊牧民にとって命の泉であり疲れた心をいやす憩いの場所である、アラブ民族にとってモスクはオアシスでありが使われる
  • イスラム教の聖典コーランによると楽園にはが生い茂り、天幕の中で美女たちが緑の衣服をまとい絨毯に座る様子が描かれている、ここからイスラム教を信奉する国の国旗は緑が多い
  • イスラムの寺院はモスクと呼ばれ最も神聖な祈祷の場所である、その外壁は青から青緑に至る寒色系で彩色された陶板による唐草模様アラベスク模様などの彩色タイトルでおおわれている
  • イスラムの女性はチャドルという黒いマントを着る、この黒が紫外線を防ぎ、直射日光を避け、皮膚を保護する役目を果たしている、男性もチャドルに似たアバという衣類を着る

  • アフリカではを誇りにしており、国旗にもよく使われる

  • 水を象徴するに情景があると考えられる
  • 古代エジプトではは再生、復活の象徴とされる、シンボルであり、冥府の神オシリスが色の顔をしているのもまさにオシリスが再生と復活の神であることを表している
  • ラテンアメリカではキリスト教を信仰するヨーロッパの行事がアメリカ土着の原住民行事と結びつき華麗ではあるが特異とも言える色彩空間を構成している
  • リオに代表されるカーニバルでは原色である赤、オレンジ、黄色、水色がよく使われる
  • 中央アメリカで使われるアップリケの一種のモラでは強烈で鮮やかな赤、黄、緑、青、白、黒などが使われる
  • インドのヒンズー教では三位一体の神々を信仰しており、ブラフマー神が、ヴィシュヌ神が青い体に、黄金の冠と黄の衣装、シヴァ神は白い体に虎の毛皮など強烈な色彩にあふれている
  • サリーはヒンズー教の女性が着用する鮮やかな原則衣装、ミラーワークも原色の布地にかがみをつけた民族衣装(魔除けの意味)、灼熱の太陽に負けないように暖色系の鮮やかなな衣装が多い,、さらに下地には緑、青などのコントラストの強い色が使われる

東アジア

  • 古来より韓国、日本の極東の文化は中国の文化の影響を受けている、人種的にはモンゴル系であるものの、モンゴルやチベットなどの人々とは文明の点でさまざまな相違がある
  • 中国では陰陽五行説から、青、赤、黄、白、黒が五色。五行は木、火、土、金、水でこれらを色彩、季節、方向、身体聖獣に対応するとしている
  • 中国の陰陽五行説は古代中国の宇宙観を表した思想の一つで陰陽道と五行説とが融合したもので、宇宙の定理は陰と陽で成立し、同時に五行(木火土金水)で規定されるとした
  • 中国では天地玄黄といって天と地で尊い色をそれぞれ黒、黄とし、秦の始皇帝は黄色を禁色とした
  • ヨーロッパで避けられていた黄色は東洋ではむしろ皇帝のみが身につけられる禁色として大事にされている
  • 天の色である黒が水墨画などの絵画を発達させた、日本でも墨絵、無彩色を尊ぶ民族的嗜好が存在する
  • 古代中国・日本では喪には白などの無彩色が使われている

日本

  • 日本書紀は古代の日本の様子が詳しく記述されているが、色の名前はの4色のみが記載されており、これらの4色は日本固有の色として今日でも儀式の時に使う幕などに対比色として使われる
  • 日本では白が神を象徴する色、赤は魔除けの色として、黒は天上界に属する色として五彩を兼ねる、青は害虫から身を守る色としてこれらの4色がよく使われる、害虫から守る青は藍染めとして古代社会から一般人の衣類に染められている
  • 推古11年、聖徳太子は臣下の階級を12に分け異なる位色を定めたが、それぞれの冠位の色を当色という

襲の色目

    • 古代~中世の青は、キハダなどで下染めした上に藍をかけて色を出す。やや青みがかった緑。現在の青に当たる色は縹(はなだ)と呼ばれる。
  • 蘇芳
    • マメ科の熱帯植物スオウから採取した染料で染める。濃蘇芳は黒っぽい赤紫、中蘇芳(蘇芳)は鮮やかな赤紫に近いピンク、淡蘇芳は紫味のピンク
  • 萌黄
    • 黄緑色。語感から若向きの色とされた。同名の重ねでも青などの代わりに萌黄が入るバージョンは若者向けであることが多い。
  • 紅梅
    • 諸説有るが、平安時代頃は紅梅の花のようなやや紫がかった濃いピンクのことと思われる。
  • 朽葉

    • 黄色い落ち葉をさす色で、平安時代は赤みがかったあざやかな黄色。
  • 平安時代になると色を重ねる配色美を楽しむ風潮がうまれ、中でも服装の裏表の色を変えて使う襲の色目と呼ばれる十二単が有名で、この襲の色目は純粋な和装の色彩文化の代表例であり、世界に誇れる日本の配色である

  • 襲の色目の配色は四季の草花や自然現象に見られる色が使われており、5つの部分に分けられる、春の部(31例)・夏の部(17例)・秋の部(31例)・冬の部(6例)・四季通用の雑の部(15例)
  • 春の部(31例)、秋の部(31例)から日本の自然の色としては春と秋には色の変化が多いということがわかる
  • 四季の中でも春に着る表が白、裏が蘇芳を、夏に着る表が青、裏が蘇芳をxxx、秋に着る表が白、裏が青は白菊、冬に着る白で裏も白はと名付けるなどその意匠を工夫している
  • 春の部の例としては、他にも表に薄紅、裏に萌木を配色した、表に白、裏に青を配色した花柳などもある

茶、地味色、四十八茶百鼠

  • 安土桃山時代後期、千利休は侘び茶を完成させ、草庵風の茶室を作り、陶工長次郎が焼成する黒の楽焼、信楽の景色鼠志野の茶碗を愛するなど地味色を愛でる伝統をつくった
  • 江戸時代には贅沢なものが愛されて衣服や生活が派手で豪華なものになっていったため幕府は町人の経済的な力をおそれ度々が奢侈禁止令を出し、派手な色を禁じたため、灰色、茶色、藍色などの粋に通じる色が発達した。その中で灰色や茶色の微妙なニュアンスを尊び、四十八茶百鼠などとして愛好された

黒の系譜

  • 黒をめでる習慣から水墨画は室町時代以降では、雪舟雪村などの優れた禅僧画家が輩出して、日本独自の水墨画の世界を創出した
  • 以後、池大雅与謝蕪村などの自由奔放な水墨画が花開き、幕末の富岡鉄斎へと墨絵の伝統は続いていく
  • 京七流(剣術)の創始者・吉岡憲法は憲法染という染めの技法を開発し、独特のこげ茶染めや黒染めを作り出した、その基本的製法は今日まで伝わっている
  • 黒をめでる風潮は、今日の黒い家電、黒い家具、「オリエンタルブラック」「ミステリアスブラック」のファッションの流行にも繋がっている

自然界の色彩的特徴

動物

  • 動物の体色はメラニン、カロチン、ビルベルジンなど皮膚中の色素で変化する
  • カロチンはフラミンゴなどオレンジの体色をした動物に多くみられる
  • カメレオンに代表される隠蔽色や保護色は外敵からの保護や捕食を容易にするためのものである、虎の縞模様、シカの半天模様も同様
  • 毒蛾のような黄色、青色、赤褐色のような目立つ退職は外敵に対して威嚇するような色は標識色という、目的によって警告威嚇認識婚姻などにわけられる
  • 孔雀やオウムの雄が派手な体系をしているのは雌を誘うための認識色で、繁殖時期にタナゴの腹が赤褐色に変化するのは婚姻色
  • 動物の退色は色素の変化により、あるいは昆虫の薄膜が層になっているような構造では、光の干渉によって輝いたり、鮮やかな色を放っている
  • 動物の隠蔽色は環境に溶け込んだ色であり、周辺との関係性を配慮した環境における色彩計画にも通じるものがある、軍事的には迷彩色として使われている例もある

植物

  • 花の色は花弁に含まれる色素の種類、量、およびその分布によって変化するが、色素の種類だけでなく、他の物質との結びつきの形態によっても変化し、その機構は複雑である
  • 花の色の分布は、黄緑(GY)から反対色相である青紫(PB)までの範囲に集中しており、緑・青緑・青の色領域が欠落していることがかわっている
  • 花の色は遠くからでも目立つ誘目性の高い色が多い、その色素は細胞質と呼ばれる細胞の外側の層に含まれている場合と、細胞液がはいっている液胞に含まれている場合がある、細胞質に含まれている場合は水に溶けにくい油溶性の性質を持っている
  • 植物要素の代表的なの3つありクロロフィル(緑)、カロチノイド(黄色、オレンジ、赤)、フラボノイド(いろんな色)である
  • 黄葉を含めた葉色の色分布はマンセル色相5YGの色相線で示され、黄緑の色相を中心としたクロマ(鮮やかさ)方向に変化している

クロロフィル

  • クロロフィルは葉緑素とも呼ばれ、葉に最も多く含まれている要素である
  • キサントフィルと呼ばれる色素とも共存している、秋になると黄葉が多くなるのは、秋にクロロフィルが破壊され共存するキサントフィルによって黄みをおびるためである
  • 藤の若葉から成葉までの分光反射率は680nm付近で大きく変化する、若葉が成葉になるつれてクロロフィルの吸収が大きくなり680nm付近の反射率が低下するためである

カロチノイド

  • トマト、カボチャ、柿などに含まれており、黄色、オレンジ、赤色を呈する
  • カロチノイドは人参の色素として有名でβカロチンを多く含むことで知らている

フラボノイド

  • フラボノイドはアジサイの色素で知られるアントシアニンと、白、クリームおよび淡黄色を呈すフラボンの二つにわけられる
  • アジサイが酸性の土では赤系、中性では紫、アルカリ性では青色になるのはアントシアニンによるもの、ハツカダイコンの酢漬けの酢が赤くなるのもこのアントシアニンが溶けて出たからである
  • フラボンと結合すると水に溶けやすくなる性質をもち、野菜を煮るとその煮汁が淡黄色に変化するのはフラボンが溶け出したためである

  • 土は岩石が分解して粉末になったもので、粉末の粒子径によって土と砂に分類されるが、色の分布としては土と砂の両者に差はあまりない
  • 土色の明度はその種類によって大きく変化し明度がマンセル明度で3から9まで見られる
  • 色相としてはが結晶化した赤土や、還元状態の青土などの特殊な例を除けば、黄赤(YR)の狭い範囲に分布している
  • 土の平均的なマンセル値は10YR 5/3であり彩度は高くても6程度で低彩度に集中している

  • 青空は空気の湿度によって見え方が変化するが、標準色票との比較から、マンセル値は2.7PB 6.2/3.6と報告されている
  • 出版物の青空を測定してみると、色相は概ね等しく、低彩度から高彩度方向に彩度の分布が見られる

3章 生活者の視点からの色彩

色の見えに影響を与える要因

  • 現実の色は、観るもの(対象)、見る人(知覚する個人)、明るさ(照明光)の三条件が整うときに見える(認知)
  • 色の見えとは、眼の反応のしかたや照明光心理的な態度によって想定される基準的な状態からどのように、どの程度違うかを捉えることである
  • 色と感情は強く関わりあっていることから心理的な要因が大きな比重を占めている

視覚

  • 眼の機能には個人差があり、見る作用を引き起こすきっかけである色感受も個人によって異なる特性がある、さらに眼だけでなく大脳皮質を主とする脳の参加によって成り立つ、この眼と脳の働きを一括して視覚の作用という
  • 色を見る現象は、光エネルギー(外界の対象物の色)が視物質に取り込まれ、視覚系の過程を経て色の知覚になる、また色には心理的な影響もあり色の見えは感情と強く関わり合っている
  • 視覚系の過程は最初の生化学作用の段階と、心理的な作用の二段階にわけられる
  • 色の感受性は原則として3つの部分からなりたっている
    1. 網膜が持つ個体的な性質と脳の働きの合成作用で一般的にこれを色の知覚という、つまり生理機能と心理機能の融合作用ともいえる
    2. 絶対感度によって受け止められる部分で心理作用と物理作用の融合による一種の判断といえる
    3. 色に対するセンス、センスの差による部分でこれも純粋な心理作用によるもので勘による才能差として考えられる
  • 色の感受性は主に知覚の部分が働いて色の見え方を決めているが、どちらといえば行為が受動的であるのに対し、絶対感度やセンスというのは見る側が能動的になって初めて現れる働きとなる
  • 大脳皮質での色感受の専門組織はV4(大脳皮質にある第4番の視覚部位)であり、その後の家庭で、さらに感情的反応が加わって色の知覚が生み出される
  • 網膜の同じ場所に同じ色を一定した刺激を与えると短い時間でも見えなくなるが、そうならないように眼球は絶え間なく小さい自動振動を繰り替えしている
  • 色の見えには全体的な見方と部分的な見方との二系統があり、両者が同時に色の見えに働く
  • 色は長時間みると飽和度の低下があり残像が現出する、一定した刺激をもつ色を見続けたためにその色の感じ方が鈍化するのである、有彩色では感度低下の早さは色相によって異なり、がもっとも速く低下し、赤、青の順に遅くなる
  • 色を見えなくする色の順応と、見えなくなることを防止するのは矛盾しているがこれがセットであるから時間的影響にかかわらず色をみることができる

スタイルズ-クロフォード効果

  • 瞳孔の周辺を通った光は,中心部を通った光よりも強度が弱くなり,暗く感じられる効果、対向車の車のライトが角度によって明るく感じるのもこの現象
  • 光線が瞳孔のどの位置を通過してレンズ(水晶体)に達するかによって感じられる明るさが違うという結果が生じる

三属性

  • 色の見えは明度彩度色相といった三属性間の相互作用による、そのうち彩度は見えの性質が不安定であるため明度や色相との相互関係を生じやすい
  • 高彩度の色は一般に明るいと感じれるのは明度と彩度の相互作用によるものである、同じ明るさの高彩度の赤と無彩色の灰色でも多くの人が赤の方を明るいと感じる
  • 明度属性は瞬時には判断できないことが実験でわかっている、このため標識などは有彩度の色が目立つ点をよく利用する、我々人間も明るい色は目立つという基本的な捉え方をしている
  • 黄みがかかった白熱灯と、青みがかった蛍光灯では白熱灯の方が明るいと感じやすい。これは白熱灯は暗くても自然に感じられるのに蛍光灯は明るい方がより自然に感じるためであり、明度と色相の間の相互作用の影響
  • カラフルネスは心理用語で高彩度の色特有の強い訴える感じを指す、有彩色に明るい光が当たるとカラフルネスが高まる
  • テレビやディスプレイなどは光の方向が定まるので姿勢や画面の向きなどが色を感じる明るさに影響するということである
  • 知覚現象では色の境界にマッハバンド、交差部分にハーマングリッドがそれぞれ生じる
  • 逆に二色の境界が不明確やあいまいになる同化的現象をリープマン効果とよぶ
  • 日本で開発されたPCCS色体系のトーン系列もこの例を利用しており、明度と彩度をまとめてトーンとしているが、これは色の見えが与える性質で可能になっている
  • 灰色が有彩色の影響で補色に色づく現象を色陰現象という

色の恒常性

  • 灰色に色光を当てても時間がたつと灰色がそのまま見えるようになる、これが眼の色順応による色の恒常性である
  • 恒常性では網膜像に依存しないで物体そのものを知覚すること

不変点

  • スペクトル上において光の明るさに影響されない波長を不変点といい、青の478nm緑の503nm黄の572nmである
  • 周囲の色相は不変点に収束していき、赤やオレンジの長波長は黄色、緑、青緑のような短波長は青みに知覚される

アブニーシフト

  • 光の純度を変えていくと色相の見えに変化が起きるのがアブニーシフト
  • 色光に白色光を加えていくと純度が下がり色相の見えは長波長に、純度を上げていくと短波長にシフトすると色相以降が起きる現象がある
  • ヘゾルトーブリュッケ現象と同様に不変点があり黄色の577nmである

ハント効果

  • 照明と色の密接な関係を説明したもので、暗くなると彩度が低くなり最後には無彩色のように見えることである
  • 曇りの日の風景は色彩的魅力が落ちるのがハント効果の例である

ヘルムホルツ-コールラウシュ効果

  • 物理的に網膜に当たる光の強さ(網膜照度・明るさ)が同じ色光であっても、その光がもつ色の純度(彩度の高さ)によって、見えの明るさは変化する。色光の純度が高いと明るく、純度が低いと暗く見えるという現象、つまり、彩度の高い色は明るく、彩度の低い色は暗く感じるという現象
  • 同じ輝度率をもつ高彩度色と無彩色を比べると、高彩度色の方が明るい色に見える、赤や青紫に比べると、黄はこの効果が小さい、その理由として黄色の高明度が影響していると言われる
  • 明度と彩度の関連した現象はかなり以前から知られており、二人の研究者からヘルムホルツ-コールラウシュ効果と呼ばれていたが現在ではL/Y効果またはB/L効果と簡略化されている
  • L/Y効果(光源色の場合はB/L効果)では値が大きいほどヘルムホルツ‐コールラウシュ効果が大きい
    • L/Y効果:三刺激値のY値(輝度率)に対するライトネス(明度)
    • B/L効果:ルミナンス(輝度)に対するブライトネス(明るさ)
    • ライトネス:白色面や無色透明の明るさに比較して、相対的に判断される、試料面の明るさ
    • ブライトネス:面が観測者の方向に発散する光の面密度の大小に関係する、色知覚
  • L/Y効果ではLはライトネスつまり明度をさし、Yは輝度率である
  • B/L効果ではBはブライトネスつまり明るさのことであり、Lはルミナンス輝度を指している

ヘゾルト-ブリュッケ現象

  • 光の波長を同じにしたまま、明るさを変化されると色相が異なって見える、このように波長と色の純度に関係なく光の明るさの変化だけで色相移行がおこる現象をヘゾルト-ブリュッケ現象と呼ぶ
  • 不変色相と呼ばれる波長の色以外のすべての有彩色は、色光を明るくしていくと青あるいは黄みを増し、暗くしていくと緑あるいは赤みを増す
  • 不変色相は478nmの青、503nmの緑、572nmの黄、494nmの赤である

ヘルソン-ジャッド効果

  • 照明光の性質によって知覚できる色が左右される現象
  • ヘルソン・ジャッド効果では2色の明度差のある灰色を色光で照らすと明るい方の灰色が照明の色光と同じ色相の有彩色に、暗い方の灰色は色光の補色に見える、つまり恒常性の一方でヘルソン・ジャッド効果から光が影響する色の見えがあることがわかった

主観色ベンハムのコマ

  • 主観色とは白黒の無彩色のパターンから有彩色に見える現象である
  • 主観色が見える有名な例であるベンハムのコマはゆっくり時計回りに回転させると外側から内側へ順に、->->ピンクと全体に淡い色調の有彩色が並んでみる
  • ベンハムのコマは逆回転すると色の位置も逆転する、この主観色は脳の神経的な活動によるもの
  • 網膜の色の感度分布はそれぞれ違う上に範囲も異なる、赤・緑の感受範囲よりも、黄・青の感受範囲の方が広いと考えられている、ベンハムのコマでだけは回転速度が落ちても消えずに見えつづけるのは網膜の感度分布がそれぞれ違うことによるものと考えられている

色の面積効果

  • 網膜はごく小さな面積では黄色と青色の色覚を失う性質がある(視角が約15の小さな視標において黄色は白く、は黒く見える)、他の色も青緑が緑に、オレンジがピンクに見えるようになり、さらに面積が小さくなるとそれらの色も無彩色に見えるようになる、逆に大面積の場合、有彩色は面積が大きくなるほど高彩度化し、これは距離に関係なく視野で対象を占める広さに関わる
  • ただし視角にも限度はあり視角が20度くらいまでといわれておりそれ以上を超えると反対の作用が起こることになる
  • この面積効果は彩度だけでなく明度にも関係する、これは明度の彩度の関連であるヘルムホルツ-コールラウシュ効果と同じで二つの属性に相互関係が生じているということである

視覚異常

  • 色覚異常が科学的な話題にされるようにあったのは18世紀の科学者ドールトンからとされる
  • 視覚機能は眼と脳から成り立っているが、そのどちらかが正常でない場合、有彩色などの色の認識が不完全になる、これを色覚異常とよぶ、またドルトニズムとも呼ばれる
  • 色覚異常はRとGがよく起きる、多くの場合は錐状体に原因があり遺伝による先天的ものによる
  • RとG感受の色素の遺伝子が類似しているため、2色要素の間で多少の変動が起きやすい、男性に起こりやすく日本人の約5%、アメリカの白人は約9%であり左利きと同じように社会的に無視できない問題である

加齢

  • 加齢により水晶体の表皮細胞の弾力が失われ、水晶体全体が硬化すると、特に近い対象への焦点合せができなくなる
  • 「水晶体への色素沈着」加齢により水晶体が黄褐色化してフィルタになり光線の通過量が減り、主に青色の光の通過が妨げられる。結果、全体が暗く見え、が認識できににくなる
  • 紫外線の影響により水晶体が光線を通さなくなる現象を白内障という、これは水晶体が白濁化する現象で光を通さないので失明状態になる。白内障は水晶体を除去することで回復できる
  • 細胞の数が減ると瞳孔の働きが小さくなり、暗い部分では見えなくなる、また明度の変化にとっさに対応できなくなる
  • 網膜の中心部の高感度の領域が狭まると物がひずんで見え、拡大鏡が必要になる、高齢者の視力は若者の3/4程度と見積もられている
  • 緑内障も高齢者にみられる網膜の障害で欧米では35歳以上の100人に2人の比率で発生すると言われる、眼圧が高くなり放置していると失明する恐れがあるが、現在はレーザー治療が進んだためほとんど心配がなくなっている
  • それ以外では糖尿病による視覚障害が高齢者のきわめておおきな障害要因となっている

色彩と照明

  • 照明は演色性、光色、照度などの条件によって照らす空間の印象を決める働きがある
  • 古代の人間の光は火(燃焼光)であり、近代におり電球が光源になったがこの変化は影響を与えている
  • 当時は白熱灯で見える色は不快だったが便利さが優先された、現代では慣れにより電球の光源の法が暖かみがあるとされている
  • 白熱電球のような燃焼光とは全くことなる分光分布を持つ蛍光灯が生活に取り入れられるようになると演色性を良い、悪いという次元で取り上げることが多くなった
  • 光の分光分布が変化すると反射、吸収の状態が変わるため色の知覚も変化する
  • 人間がみることができる光の波長域はおよそ380nm-780nmまで、短波長は青みを長波長は赤みを帯びて見える
  • 白熱電球は560nm以上を多く含んでおり黄色っぽい光となる、まんべんなくもつ光は白くなる
  • 蛍光ランプは発光原理からその分光分布は任意に変えられ、3000Kから7000Kまであるが、規格を統一する必要がありJISでは電球色(L)、温白色(WW)、白(W)、昼白(N)、昼光(D)の5種類に分類される
  • 光源の演色性の良し悪しだけで単純に色の見えが判断できない理由に人の眼の色順応の現象があげられる、人の眼は照明光の光色が変化した時も白いものを白と近くできる(色の恒常性)
  • 色順応は光源の光色の変化を眼の感度がそれに応じて変化することで成り立つ、最近のビデオカメラでも同様の感度調整機能を持つものが増えており、この機能はホワイトバランスと呼ばれる
  • 照明された色の見えは眼の色順応機能と光源の分光分布の変化によって反射光の分光分布が変化する現象に左右される、一般には相互に打ち消しあって見えが変化しないが完全に打ち消し会えないような照明光と物体が組み合わさった時、演色性の悪さを意識する

演色性

  • 店舗などで照明された物体の色の見えのことを演色という、照明光によって物体の色の見え方に与える光源の特性を演色性という
  • 演色性はカラーレンダリングとも呼ばれ、光源がどのくらい色ズレをおこすかという性質のことである
  • 演色性の評価として評価する光源と自然昼光白熱灯のような基準の光との双方で照射して出た色素を即瀬底するのが一般的
  • JISの演色性評価方法では試験色を15色決め、分光反射率を数表で与えている、基準の光には自然昼光であるCIE昼光を使う、各色はマンセル値が定められている
    • No1-No8までは明度、彩度の赤・黄・黄緑・緑・青緑・青・紫・赤紫
    • No9-No15までは高彩度の赤・黄・緑・青及び肌色や木ノ葉の色などに基づいて選定されている
    • No1-No8までの試験色の照射によって求められた特殊演色評価数の平均を平均演色評価数(Ra)とよぶ
  • 演色性の良し悪しを数値的に表したものに演色評価数がある、演色評価数は色のずれの度合いを100からの差で方言したもので、どのように色がずれているかは考慮していないため、演色性の等しい光源で照らされた物体色は皆等しいわけではない、相関色温度とも無関係であることを理解して使用擦る必要がある
  • 演色性の高い照明とそうでない照明を比較すると、演色性の高い照明で照らした方が同じ照度でも明るく感じる、この傾向は三波長形蛍光ランプで特に著しい
  • 三波長形蛍光ランプは白色蛍光ランプの約70%の照度で同じ暗いの明るさ感が得られる、こうした実験も明度の彩度の関連であるヘルムホルツ-コールラウシュ効果の一つである
  • 三波長形蛍光ランプは市販されている蛍光ランプの中で最も演色性が高い

  • 物体色は同じ距離・同じ光源で照らしても明るさが違うことがあり、これは物体の反射率の違いによるもので、反射して眼に入ってくる光束に違いがでるからである
  • 光の明るさは入射する光の量の多さ(光束、単位ルーメン)で決まりこれを測る量として照度がある、単位はルクスである、見た目の明るさは輝度で表し単位はcd/m2である、なお明るさの感覚にもっとも近いものは輝度である
  • 照度は光源からの距離に関係しており光を照らす場所は遠くになると暗くなる。これは距離の二乗に反比例する、例えば距離が1/2になれば照度は4倍に明るくなる
  • 反射する物体の反射率によって眼に入射する光束が変化する、これを測る量として輝度がある、物体や光源を見た場合の明るさ感覚にもっとも近い量は輝度である
  • ガラス戸腰の光より障子越の光の方が柔らかく感じられるのは障子の面によって太陽光の輝度が弱められるからである
  • 輝度がみる方向に関係なく一定の反射があらゆる方向におこることを拡散反射という
  • 輝度は光源の発行面の大きさに関係し、同一の光束なら光源の大きさが小さい方が明るく、すなわち輝度が高い
  • 蛍光灯と白熱電球では光束の少ない白熱電球の方がまぶしく明るく感じられる、これは蛍光灯が広い面積から発せられる光であるのに対し、白熱電灯は小さな面積のフィラメントから光束がでているため
  • 照明空間の雰囲気は演色性の他、相関色温度照度によって大きく変化する
  • 光源の色をあわらす光色は色度や相関色温度で表すことができる
  • 相関色温度とは、物体をある温度に熱した時に発した色光源の色と一致させることによって光源の色を温度で表したもの
  • 光色は相関色温度によって変化し、色温度が高い光源は青白い光を出し部屋は涼しげな印象を与える、色温度が低くなると光色は黄色い光になりくつろいだ印象を与える
  • クリュイトフの実験では低照度では相関色温度の低い暖かい感じのする光色か、光源の相関色温度が高く白い光色になるに従い照度も高いものが快適になるとした
  • 光色だけでなく部屋の印象は照度との関係によるものが大きい
  • 照度と光色の組み合わせによって照らされる部屋の快・不快感が大きく変化し、快適な空間をつくるには低照度から高照度になるにしたがって色温度高くするとよい
  • 相関色温度の高い青白い光色の場合、照度が低すぎると冷たくて深いな雰囲気をもたらす、反面、相関色温度の低い黄色の光色の場合、照度が高すぎると暑苦しい深いな雰囲気をもたらす

CIEの演色性ガイドライン

  • 光源の演色性によって照明器具の用途も変わる、CIEはRa20-100の範囲を数値幅20ごとに4分類したガイドラインを示している
  • 一般作業をするような場所ではRa60程度のもので構わないが、住居やレストランなど色彩の見えを比較的大切にする場所ではRa80以上のランプが好ましい
  • 美術館色比較や検査など色の厳密さが求められる場ではRa90以上であるべきとしている、蛍光ランプでいえば演色AAタイプ以上の昼白色昼光色が適している
  • 逆にトンネルなど演色性が意味を持たない場所ではコストを優先してRa20程度のものが用いられることが多く、HIDランプ、高圧ナトリウムランプを用いることが多い

照明による色彩の演出

  • 照明とは光を人の生活、活動に役立たせることを目的として、光を応用すること
  • 照明には光の量的な側面と、質的な側面があり、量的な側面とは明るさに関するものであり、質的な側面にはグレア、光の色と、演色性、照明の方向などがある
  • 照明の量的側面における物の面の明るさ感は物の面の反射率照度を乗じた光束発散度が重要である、物の色や形を見えやすくするには対象物と背景となる面の反射率に大きな差異が発生しないようにする配慮する必要がある
  • 空間の照明には各種の考え方があるが、室内の照度分布とそれに伴なう照明器具の配置の関係などがら大別できる
  • CIEは場所を3分類し目安を設定しており、外科手術のような極めて繊細な視作業の付加照明には10,000~20,000lxの照明が必要で、普通の視作業には少なくとも500lx〜1,000lxの照度が必要である
  • 同じ空間でも壁面や床面の色彩が違うと照度が異なる
  • 照度が低くなると特に色がもつ彩度が弱く見えるので十分な注意が必要である
  • JISでは視作業面(一般には床上85cm)における水平面照度で常時維持しなければならない値を目安としている
  • 照明の量は照射する室内で用いられる内素材などの反射率が関係する
  • 色彩のもつ反射率によって照明率は変化し、照明率は照明率表によって求められることになる
  • 全般照明方式は部屋全体が一様の照度にする融通性の高い照明
  • 空間内で特に目立たせたい物や場を照明する手法を局部照明といい、局部照明方式は個々の対象に対して個々の照明を与える、局部的全般照明方式は机など作業を行う場所に対して照明を効果的に置き照明下にある物の色彩が強調される
  • 対象とする物の形態を魅力的に見せるには適度な陰影のある表情を与えることが大切であり、これおを立体感の演出という
  • 色彩は物の表面のテキスチャとともに知覚され、指向性の強い光を表面をなめるような角度で照射するとテクスチャを強調することができる

照明器具の分類

  • 室内照明は目的用途に応じて器具を選ぶのが一般的である、照明器具は上方に出る光束と下方に出る光束の比率によって5つに分類できる
    • 直接(90-100) > 半直接(60-90) > 全般拡散(40-60) > 半間接(10-40) > 間接(0-10)
    • 直接照明
    • 上方が0-10%、下方が100-90%の光束
    • ダウンライト
    • 半直接照明
    • 上方が40-10%, 下方60-90%の光束
    • 一般に使う
    • 全般拡散照明
    • 上方が60-40%, 下方が40-60%の光束
    • 部屋全体を明るくする照明、上側にも下側にも同じように配光する、電球グローブ形器具などが相当する
    • 半間接照明
    • 上方が90-60%, 下方が10-40%の光束
    • シャンデリア
    • 間接照明
    • 上方が90-100%, 下方が10-0%の光束
  • 下方への光束が小さいほど、天井や壁などからの反射光を利用した照明になるので室内を柔らかな落ち着いた雰囲気にすることができる

  • 照明設計の手順

    1. 施設の使用目的、照明の目的の把握
    2. 設計照度の検討
    3. 照明方式の選定
    4. 光源の選定
    5. 照明器具の選定
    6. 所要灯数の計算
    7. 照明器具の配置の検討
    8. 照明案の検討
  • 照明設計には照明の量的側面と、質的側面が大きく関る

  • 量的側面とは照度の量やバランスを指し、質的側面とは色温度や照度が作り出す照明空間の雰囲気や色ずれの度合いを示す演色性や照射方向、テクスチャ感の演出を指す

  • 部屋の明るさを予測したり、配置する照明器具の数を算出するための照明計算法を光束法という
  • 一般に全般照明による室内の照度は光束法による照度計算式を用いて予測する、この場合照明率は反射率にも関係する
  • 物体面の明るさ感は光束発散度が左右する、これはその物体の反射率照度をかけあわせたもので反射率に相当する量である
  • 物体を見ているとき、その対象物より周囲の光束発散度(輝度)が高すぎると、対象物が見えにくくなる、背景の面の色彩の反射率を高くしすぎない配慮が必要
  • 光色はそれ自体で部屋の雰囲気を演出する、色温度が高く、照度が低いと陰気で寒い雰囲気になる、逆に色温度が低く、照度が高いと暑苦しくなる
  • 光の光色(色温度)はケルビン値によって区別する、色温度の低いと暖かく落ち着いたムード、色温度が高いとさわやか、涼しさ館が高まる
  • 光色は空間の雰囲気を大きくかえる力をもち、質が極端に違う光を組み合わせると対比効果が起こり異様な雰囲気になってしまう、どちらかを主、片方を従としアクセント効果を狙うことが望ましい
  • 昼間、明るい屋外から映画館のような薄暗い部屋にないるとしばらく周囲の状態は見えにくいが、部屋の明るさになれてくるにつれ見えるようになる、このような現象を暗順応という
  • 明暗順応と同じように光色の変化でも同じことがおきる、光色が大きく異なる空間を移動すると人の目には色順応が起き、色温度の差で物体が著しく変わって知覚されるが時間によって自然光で見るのと同じになる
  • 演色評価数は目安になるが、色温度の異なるものは比較できない、優劣は比較できない、再現の好ましさやずれの方向は表現しない、1-2程度の小さな差を問題にすることは意味がない、他にも左右されるものはある、などの注意がある
  • 生活の慣れから光りは上から照らされた方が自然に感じる
  • テクスチャ(凹凸)がある場合は陰のつかいかたが見え方の影響を及ぼす
  • 生地のテクスチャ感を演出するには白熱ランプのような点光源で直線的に進む光源を用いる、このような照明光は指向性が強い光という
  • 陰影の使い方で立体館が演出できる、左右の照度差を1:3-5程度にするとよい
  • 照度の高い光はモノトーンの柄をより際立たせる、この現象はハント効果による

分光分布と色彩知覚

網膜

  • 網膜は光を生体内部で使える信号に変換する役目を果たしている
  • 光の強度を測定することはできないが、光を各波長に分光することができる

錐状体

  • 網膜にはS錐状体、M錐状体、L錐状体のそれぞれ短、中、長波長を処理する3つがあり、これが三原色説の基礎になっている
  • この3錐状体の興奮で色が決まることがCIE,XYZ表色系の基礎となっている
  • 色順応では3錐状体の興奮のバランスをとることで行われる
  • 錐状体の反応による感覚に対して知覚は日常や形、大きさなどの情報が付加されるものでより複雑な心理的変化である
  • 太陽光の下から白熱電球の部屋に入ると、電球の色を黄赤に感じていたものが時間がたつとその印象が薄れていく、これは右上がり分光分布の光源に対し3錐状体の興奮を揃えるように補正する機能が働くからである

水平細胞

  • 錐状体で変換された色情報は、次に水平細胞に送られ、水平細胞以降では反対色性をもつようになる、反対色性を反映する現象として補色残像がある
  • 水平細胞以降では赤:緑黄:青の信号がそれぞれ対になり、これはヘリングの反対色説の基礎になる
  • 補足残像は赤い色を凝視してから視線を無彩色の面上に動かすと、赤の補色であるの色が数秒見える現象

条件等色

  • 条件等色での観察条件は、照明光源、試料の大きさ、観察者であり、分光分布が異なっていても観察条件が固定されていれば3種類の錐状体の興奮は同じとなり、同じ色に見えることがある
  • 条件等色が日常的に用いられている例として、写真テレビなどがある
  • 物体の色は照明光源の分光分布が変われば当然変化するはずである、太陽光も、太陽からの直接の光と散乱した短波長の光の混合であるから、時間が変化するとその比率は大きく変化し分光分布も変わる
  • 太陽光の変化や、電球の違いなどがあっても色が変化したという印象のない心理的要因には色順応と色の恒常性がある
  • 見る対象物の大きさは不変でも、網膜に映る像は見る距離によって変化する、色も照明光が変化すると対象物から反射される光の性質が変化して違う色に見える。

色の恒常性

  • 網膜上に結像する光学像は観察する条件により非常に変化しやすい、このような特性をもつ網膜像に依存しないで、物体そのものを知覚することが恒常性である
  • 日陰の雪と日向の石炭では、日陰の雪はそのまま、日向の石炭はそのままと認識されるが、物理エネルギーであれば日陰にある雪から反射されるエネルギーの方が少なく、より暗く知覚されるはずである(がそうならない)
  • 恒常性は顔色などその物体に付随した色では顕著に起こる、形の伴わない色紙などではその分光分布に従い、恒常性が現れやすいものとそうでないものがある
  • 比較的彩度の高いものは光源が変化しても色相が変化することはないが、彩度の低い色では光源が変化すると色相が変化するものとしないものがある
  • 変化しやすい例としては、草木染めで染められたもので、太陽光で彩度の低い色相に知覚されたものが、白熱電球では彩度の低い黄色に知覚されることがある

ゲルプ効果

  • 恒常性を実験室で観察した現象
  • 黒いベルベットだけを照らした照明条件では、ベルベットは白に知覚され、その前に白い紙を置くとベルベットは黒に知覚される
  • これは白い紙が基準として働き、色の恒常性が現れた現象である

カッツの色の現れ方

  • 分光分布が同じでも色の現れ方が異なれば同じ色と感じらない
  • 色の現れ方について最初に分類したのは心理学者カッツ、9種類に分類した
  • カッツは偏見のない態度で直接経験したことをあるがままに観察する方法をとった、この観察方法は現象学的観察と言われる
  1. 面色
    • 雲一つない青空を青空しか見ることのできない状態で見たときに現れる色の様子
    • 観察者との位置関係があいまいで距離感が認識できない
    • やわらかく、前方面に平行な均一面であり、美的な効果があるように知覚される様子である
  2. 表面色
    • 物体の表面として感じられる色
    • 観察者との位置関係がはっきりし、その色は物体の表面にあり、その物体の表面にあわせてすべての方向をとるように知覚される色
    • 明確に認識され堅い感じとなる
  3. 空間色
    • 透明な瓶に色水を通して物体を見たときにその物体までの3次元空間を色が満たしているように見える
  4. 透明面色
    • フィルタの縁が視野に入り、フィルタと他のものが見えるとき、その色は3次元ではなくフィルタの面だけに現れる
  5. 透明表面色
    • 片目だけをフィルタで覆った時に、色と物体とが融合しているように見える色
  6. 鏡映色
    • 鏡に映った物体の像を見るときの、鏡の固有の色をすかして見える色
  7. 光沢
    • 部分的な反射光の明るさが、その物体の表面色よりも明るいため、その表面の知覚を部分的に妨げるような色
  8. 光輝
    • ろうそくや炎の色の様子、暗室または曇りガラスか紙を裏側から強い光で照らした時の色の表れ方
    • 同じ照明下でしろよりも明るく感じる色
  9. 灼熱
    • 単にその表面だけが光り輝く色と感じるだけなく、その物体全体の内部にまで色が広がったように認識できる色
  • 中でも面色表面色は特性の項目の差を4項目で比較している

    1. 観察者と対象の色との位置関係は実感できるか「定位」
    2. 知覚される表面はどんな状態か「表面」
    3. 色が現れる面の方向ががわかるか「方向」
    4. その面が与える感じはどうか「感じ」
  • 現在、色に関する分類は、どのように知覚されるかの心理学的分類と、どのような測定かの測色学的分類で行われる

  • 色を分類するためには、その目的にあわせて心理学的立場で分類しているのか、測色学的立場で分類しているのかを明確にする必要がある

色彩の法的規制

JIS

  • JISとは日本工業規格[Japen Industrial Standard]の略で、工業標準化法に基づいて制定された国家規格である
  • JISは生産におけるコストの低減、取引の単純公正化、使用・消費の合理化などを目的につくられている
  • JISでは5年ごとに規格の見直しが行われて、適正な内容が維持されている
  • JISではすべての規格はJIS Z8190(1982)「色に関する用語]」のように規格番号と表題がついている
  • 規格番号のZはいくつかの産業に共通する基礎的事項であることを示す記号で、4桁の数字は各規格を意味している
  • JISでは色の規格が制定されており8000番台が色に関する規格になる、JISハンドブック61-色彩は書店でも購入できる
  • 色彩に関するJISは大きくわけると、用語、表示方法、測定方法、光源、安全色、変退色試験方法、工業製品などにわけられる
  • JIS Z 9101では国際的な標準化を目的に「事故及び健康への危険の防止、ならびに緊急事態への対応を目的とした安全色及び安全標識」について規定している
  • JIS Z 9101は国際的な標準化を進めている国際標準化機構(ISO)の「安全色及び安全標識[ISO3864]」を日本の実情に即して一部変更・追加したものである
  • JIS Z 9101では「安全に関する意味が与えられている特性をもつ色」を安全色、「色と形状との組み合わせによって、一般的な安全上の伝達内容を伝え、また、図記号または文言を付加して、特定の安全上の伝達内容を使える標識」を安全標識として定義している
  • JISで決められている安全色彩には、その使用において強制力がない、そのため場合にょっては同じ意味に違う色が使用されることもある、信号機のようにどの場所においても同じ色の使用が望まれるものに関しては法律によって規制されている
  • 法律の制定年などの関係でJISの規格と法律が異なった色が使われている場合は、法律が優先されることになっている
  • 信号機の色及び意味は道路交通法施行令という法律で規定されている

安全色彩の種類と意味

  • 安全色彩は色のもつ特性を有効に利用して危険の除去および予防を迅速かつ正確に行うことを意図した物

安全色

  • 安全を図るための意味を備えた特別の属性をもつ色
  • 安全色は安全、防火システムの要素としてはとらえられるもので、禁止注意などの情報を迅速かつ正確に伝えることによって安全確保に役立てることを意味する
  • 安全色は「災害防止及び救急体制のための施設または箇所の表示に色彩を使用することによって、安全上必要なものまたは箇所を識別しやすくしようとするものであって、本来の災害防止策の代用としては考えてはならない」ものである
  • 安全色には13個の規格、変退色試験方法には10個の規格がある、工業製品の色には14個の規格がある
  • 安全色には、表面から反射され表面色として見える一般材料、発光体のような光輝を放って知覚される蛍光材料などが使われる
  • 使用する媒体によって色域が異なるので安全色として最も適切と考えられる色度座標、および輝度率が媒体ことに決められてる
  • 放射が入射した方向の反対に近い方向に戻される材料である、再帰性反射対

安全標識

  • 安全色と幾何学的形状を組み合わせた基本形によって、一般的な安全性のメッセージを伝え、図記号を加えることで特定の安全のメッセージを伝える標識
  • 安全標識に使用される安全色は、安全に関する意味が明確に与えられている色で、他の色との識別が容易にできることが望ましい、そのため識別性を高めるために対比色と組み合わせて用いられることがある
  • 安全色と対比色の代表的の例として踏切遮断機の黄色ががある
  • 安全色と対比色の組み合わせにも制限があり、黄色のような明るい色では黒を使うことが多い、ただし材料問題で白を使うこともある

安全マーキング

  • 安全標識、保安警標などとは別に、安全のメッセージを伝える対象物または位置を明確にするために安全色および対比色を使用するマーキング

透明色光光信号色

  • ISOでは透明色光、および光信号色の標識灯や信号灯火について安全色の対象としていない
  • 透明色光とは夜間の安全標識灯のような蛍光ランプの光が半透明のフィルタを通して見える透過色の光を
  • 光信号色とは、光源そのもの色、及び着色ガラスなどによる透過光の色のことである
  • りん光によって照明灯が消灯したときにも知覚されるりん光材料などがある

安全色の意味

  • 赤には禁止, 防火, 停止,(高度な)危険, 緊急の意味があり、防火標識消火表示禁止標識緊急停止ボタン火薬および発破警標、工事中赤ランプなどで使われる
  • 危険を表示する色は黄赤であるが、切迫的な危険や直ちに危害を及ぼすような場合では黄赤では弱いと考えられたため、赤が火薬類の表示などに高度な危険を示す安全色として用いられる
  • 黄赤は危険、明示の意味があり、危険警標、配管系の危険表示、スイッチボックスのふた、救命具などで使われる
  • 黄には警告、明示、注意の意味があり、黄赤と異なり、よく気をつければ回避できる状態で使う、警告標識、クレーン、踏切、信号の注意
  • 緑には安全状態、進行の意味があり、特定の物品・設備の存在場所の方向、および避難の方向を明示する誘導標識
  • 信号旗などは視認性がよいためが使われることがあり、必ずしも緑が安全、進行で使われるものではない
  • 青には指示、誘導の意味があり、アメリカでは用心でも使われるが日本では使われない
  • 赤紫には放射能の意味があり、放射能標識では黄色と組み合わせて用いることにより誘目性の高い目立ちやすい標識にしてある
  • 白は一般に対比色として用いるが通路としても使われる
  • 黒はそれだけでは意味はあまり持たずに安全色のの対比色として使われている

標識

  • 道路標識に関しては「案内標識」「警戒標識」「規制標識」「指揮標識」として分類されている
  • 案内標識とは高速道路等に設置するもので「入り口の方向」「入り口の予告」「非常電話」「待機所」「非常駐車帯」「国道番号」「回り道」を表示するもの以外は、文字、記号、及び区分線を、地をとするとされている
  • 危険物の規制に関する規則では「火気注意、または火気厳禁」は地をに文字を給油取扱所にあっては「給油中のエンジン停止」を地を黄赤、文字を黒色にするとさrている
  • 昼間障害標識航空法施行規則に規定されている、昼間障害標識設置物件として煙突、鉄柱、柱などその高さに比い幅が著しく狭いものや、骨組構造の物件、架空線、および係留気球などがあげられている
  • 人間が外部から得る情報の85%は視覚から得ており、対象の認識は色→形→テクスチャの順に行われる、安全色彩はこの認識特性を踏まえて規定されている
  • 安全色といえども視覚情報であり周囲に様々な刺激障害が存在する場合には容易に視認されないことが生じる
  • 高齢者にとって現在の安全色が、適当であるかを検討する必要があるとともに緊急の場合における人間の認知がどのように行われるかも問題として考えられる
  • 環境色彩などでは、標識の視認性なども考慮しつつ街並みに使うことのできる色の規制が行政レベルで試みられている
  • 色の特性として視認性、誘目性、識別性をあげることが必要である
  • 対象の存在、または形状の見えやすさの程度を視認性という

安全標識

  • 安全標識とは安全色と幾何学的形状によって安全性のメッセージを与える
  • 安全マーキングとは安全標識とは別に、安全のメッセージを伝える必要のある対象物又は位置を明確にするためのに安全色及び対比色を使用するマーキングである
  • 安全に関する情報を迅速かつ正確に伝達する場合には、色だけでなく、どのようなでどのような記号文字と組み合わせるかを統一しておくかが重要になる
  • 標識は一般に、でなにであるかを知らせ、必要であらえば文字を入れて作られる
  • 色と形の意味が十分に浸透していないときは情報を伝達することができないので、文字を書き込むことで補い、わかりやすい標識にして用いる、ただ国際的に共通に用いることを考えると文字に頼らず色と形だけでデザインすることが望ましい

  • 標識は色と形を使い、必要によって文字を入れる

  • 第一種標識=基本形+図記号
  • 第二種標識=基本形+補助標識
  • 第三種標識=基本形+図記号+補助標識
  • 補助標識は文字や矢印が使われる
  • 安全標識の種類は禁止標識、指示標識、警告標識、安全状態標識、防火標識、放射能標識、補助標識の7つ

4章 生産者の視点からの色彩

色彩の基礎知識

色素

  • 色素とは植物や動物に色を与える成分でカロチンカルタミンクロロフィルなどがある

色料

  • 色料には、染色に使われる染料、狭義の色材の着色原料となる顔料がある

染料

  • 染料は固有の色をもつ粉体で、有機系化合物の一種、水やアルコールに溶解し、布地や糸の繊維間隙に浸透して染着する性質を持っている
  • 染料にて紫に染めるのが大変だったことから紫が高貴さを表した、皇帝しか着用できなかったことから皇帝紫と呼ばれたこともある、紀元前1000年頃には地中海沿岸の人々により紫の染色には巻貝の抽出液が使われていた
  • 日本では植物による染めが行われているが、自然の産物なので使用料には限度がある
  • 染料を人間の手で作り出す研究はリービッヒ、ルンゲ、ホフマンなどドイツの化学者などが熱心にすすめ、原料の化学反応で染料が合成できることがわかった
  • ホフマンの指示でパーキンが紫の液をつくり、モーブとして特許を得た。これが人類最初の合成染料になった
  • 日本では大正までと戦後に盛んに開発される

顔料

  • 顔料も染料と同様に色のついた粉末であるが不溶性であり、顔料には染着する能力も紙面に付着する力もないため植物乾性油などに練りこんで絵の具やインキとして使われる
  • 顔料は照明光が顔料粒子の表面で選択的に吸収されるので同じ顔料の量でも粒子が細かく砕かれているほど色の濃さが増大する
  • 顔料ワニスの成分とのじゅうわせいに優れていることが重要、発色効果や光沢効果を良好にするためには、顔料粒子の表面ワニスでしっかり包まれていることが必要

天然鉱物顔料

  • 人類が使用した最も最古の色料で固有の色をもった岩石や土を細かく粉砕したもの、二万年前の旧石器時代に獲物を取れることをねがって洞窟の壁に様々な動物が描かれている
  • 現代でも天然鉱物顔料は日本画の分野で岩絵の具の名称で使用されている

人工無機顔料

  • 無機顔料の科学構造は、炭素・水素・酸素・窒素などを成分とする有機顔料の構造に比べるとはるかに簡単であり、染料の合成のずっと古くから金属による無機顔料の人工的な製造は行われている
  • 魏志倭人伝によると景初3年卑弥呼の使者に金印などとともに鉛丹を持たせて帰したとあり、顔料が貴重なものであったことを示している
  • 金属を主成分とする色のついた化合物である無機顔料には、辰砂(しんしゃ)や弁柄(べんがら)のような天然の鉱物顔料とコバルトブルーや群青など人工のものがある
  • 代表的な金属粉顔料の金粉銀粉は落ち葉のように重なるリーフィング効果によって光を多方向に反射する
  • 金粉は合金の亜鉛の比率によって赤みの金色から青みの金色まで色合いを変えることができる
  • 金粉は空気中の微量な硫黄分と反応して黒変する、このため高価なものの彩色には安全性の優れた本物の金粉が使われる、逆に本物の銀粉硫黄分に反応して黒変しやすい性質がある
  • メタリックな色彩効果は、銀粉を薄い色の顔料と併用することにより得ることができる
  • 紀元前500年ごろの古代エジプトでは鉛の板をにつけて、鉛白という白色の顔料などがつくられていた
  • 各種の人工無機顔料が大量に生産されるようになったのは1700年代である

有機顔料

  • 無機顔料が金属から作られるのに対して有機顔料は染料から作られる、粉などに染め付け溶けない(不溶性)形にして使う
  • レーキ顔料とは染料を水にとかして白い布地に染めつける代わりに、白い粉末の上に染めつけて水に解けない形にして作れられた顔料ことである、付着の母体の粉末を体質顔料とよぶ
  • また濃度の高いものをつくるために、粉は使わず、染料だけを不溶性にしたものを、トーナー顔料と呼ぶ
  • 有機顔料の耐光性や耐熱性は、無機顔料より劣るが、無機顔料と比べると色がはるかに鮮やかで、着色力も強く、色数が豊富であり、比重が小さいので透明性に優れている
  • 近年の有機顔料は鮮明な色彩、強固な耐性などの優れた機能をもった高級顔料とよばれるものになっている
  • 重金属による無機顔料はその毒性が問題になるため、使用が限定されることもあり、有機顔料の需要はますます増えてきている

カーボン顔料

  • 天然ガスやを不完全燃焼させたときにできるすすは、黒色の色材をつくるときの主要顔料でカーボン顔料と呼ぶ
  • 天然ガスから作ったのをカーボンブラック、油から作ったのをランプブラック、油煙とよぶ
  • カーボン顔料は無機顔料に含まれる場合もある

特殊顔料

  • 金属粉顔料は、金属を粉末にしたもの
  • 窯業用顔料は陶磁器の絵付けに使用される顔料

蛍光顔料

  • 蛍光顔料は、蛍光性を持った合成染料を粉末にしたもの、蛍光顔料は本来の色光の他に、照明光に含まれている無色の紫外線をいったん吸収し、これを長波長の色光に変えて再放射する性質を持つ
    燐光顔料

  • 燐光顔料も蛍光顔料と同様に紫外線を長波長の色光にし光輝性の高価を示す働きをする、燐光顔料は安全標識などに使用されている

  • 蛍光顔料紫外線が当たっている間だけ、明るく輝かしい色彩効果を示すのに対して燐光顔料は照射が終わった後も長時間にわたって色光の放射を続ける点が異なっている

パール顔料

  • パール顔料は、真珠の表面のように見る角度によって色調と光沢を変化される顔料
  • 高屈折率を多重層にすることで光を複雑に反射させ、色光の波長を干渉させる光の干渉効果を生む

示温顔料

  • 顔料には金属化合物が熱によって色が変わることを利用した示温顔料と呼ばれるものがある

退色・変色

  • 日光にあたることなで色相の変化を示す場合を変色といい、色相が変化せず、彩度の低下と明度の上昇で白色に近づくことを退色とよぶ
  • 無機顔料は耐光性に強いが無機の薬品には弱い、群青は酸に触れると無色になり紺青はアルカリに触れると茶褐色になるが、このような色相の変化が変色である
  • 種類によって耐性の強度などが異なり、分子構造の単純なカーボン顔料無機顔料は耐光性や耐熱性に優れているが、有機顔料のジズアズイエローなどは日光にあたえると色があせる

色料

  • 色料は照射された白色光のなかから、ある波長域の色光を吸収し、残った色光が眼に入って網膜の視細胞に色を感じ取らせるという働きをしている、この選択的な吸収を行う役目を果たす第一の要素が、色料分子の化学構造でどのような種類の元素がどのような形で結合しているかというである
  • 絵の具や印刷インキ、塗料などはすべて色材だが、対象物、目的が違うことを抑えておく必要がある
  • 絵の具や印刷インキ、塗料などの各種色材は感想顔料を液状のワニスと混ぜ、機械でねった分散体としたものである
  • 展色剤とは顔料の粉末を練って絵の具や塗料、印刷インキなどを作るための成分で、着色面で乾いて皮膜を形成し、顔料を固着させる

絵の具

  • 絵の具の工業的生産が行われるようになったのは18世紀以降で、それまでは天然の岩石や土類を砕いた有機顔料であった
  • 絵画やデザイン作成のために使用する色材はさまざまな展色剤が工夫され、いろいろな種類が作られてきた
  • 古代の絵具は無機顔料が多く、宝石を砕く物などは効果であった、従って画家が宮廷に絵の具を必要な量もらって書くなどしていた

フレスコ

  • フレスコとは顔料を壁面に固着させるための展色剤を一切つかわず、顔料を水で溶いて、塗り立ての乾いていないモルタルをつけ、壁と一緒に乾燥させる方法である
  • モルタルとは主成分は石灰で、現代ではレンガやコンクリートブロックの目地を埋めて接着層としたり、外壁に塗ったり、土間に仕上げ材として使われるもの
  • ローマのシスチナ礼拝堂のミケランジェロによる天井画「天地創造」はフレスコを使用した巨大絵画である

テンペラ

  • テンペラとは卵の白身や黄身を展色材として使った絵の具で、中性ヨーロッパの装飾写本や祭壇の板絵に使用された
  • テンペラの傑作としては「受胎告知」などがある

油絵の具

  • 油絵の具は植物性乾性油を展色材に使用した絵の具、乾性油とは液状の油が空気の酸素を吸収し油の分子が結合して乾燥皮膜を形成するもの
  • 15、16世紀のルネサンス期のイタリアでは画家の多くがテンペラに代わって油絵の具を使用するようになり、光沢があり、堅牢な画面を生み出すようになった

水性絵の具

  • 水性絵の具はアラビアゴムやでんぷん質のデキストリンをグリセリンに溶かした液で、顔料を練った水溶性の絵の具
  • 18世紀末にイギリスで「ウォーターカラー」の名称で販売される
  • 紙に軽い味の作品が描けることや、顔料の多様化の背景から水彩画家の数が急速に増加した

ポスターカラー

  • ポスターカラーは、水溶性の展色材に不透明度の高い無機顔料のチタン白と有色顔料を練り込んだもの
  • 厚めの用紙にポスターの図案などを描くときに使われ、塗りむらが少なく重ね塗りもしやすい

日本画絵の具

  • 日本画絵の具は動物や魚類の皮や骨からとったにかわを固着剤として、その水溶性で岩絵の具や人工無機顔料などの粉末を練った絵の具
  • にかわは冷えると凝固するので日本画家は通常、書く都度、顔料をにかわ液で練ったり、絵の具を自製する

合成樹脂絵の具

  • 合成樹脂絵の具は合成樹脂がもつ光沢、速乾性、接着力、皮膜強度に期待されたもので、現在ではアクリル樹脂が主体

クレヨン、パステル

  • クレヨンは顔料を各種のろうと少量の油脂で練りかたねたもの
  • パステルは顔料と白色粘土を微量のトラカントゴムのような接着剤でかためたもの
  • 混色ができないので色数は多く作られ、19世紀のドガ、ルノワールなどが愛用し、多くの作品を残している

印刷インキ

  • 印刷インキはすべて古代の中国で誕生した、日本には遣隋使や遣唐使によってもたらされた、770年に法隆寺の陀羅尼経が100万分印刷され年号が明確な最古の印刷物とされている
  • 中国の印刷技術はヨーロッパにも伝来され、ドイツのグーテンベルクが42行聖書を印刷するのは1453年、グーテンベルクは鉛活字を考案した
  • 動物の骨をにて採ったにかわの液で練って墨をつくる技術が生まれ、書写がさかんになる
  • 印刷インキも絵の具と同様に色料として顔料を使用し、展色材で練って製造するが、展色剤のことをビヒクル(運搬車)という特殊な言葉でよぶ
  • ビヒクルは印刷する際、大きな紙面に顔料粒子を均一に転移させたり、インクを速乾させる特性をもつ展色剤である、この顔料粒子を均一に転移しする機能を流動特性とよぶ
  • 版面を湿している水膜と反発しながら画像を保持する科学的な特性を界面適性という
  • 印刷は大量の紙が重なりあうので、乾燥には工夫が必要
  • 印刷インキには良好な印刷適性のほかに、印刷効果が求められる、色再現性、光沢の程度、各種の耐性など
  • 色再現は絵の具や塗料などの色材には使用されず、これは印刷にはすべて色原稿が存在しそれを再現するため
  • レギュラーインキは絵の具や塗料に近い形で数十種類の色と、混色の1000色あまりの見本があったりする
  • 指定色インキは発注者サイドからの指示でインキメーカーが作成するインキで、包装紙や紙器などのパッケージ類や企業カラーのベタ刷り印刷に多い
  • プロセスインキは、基本色のマゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの四色で重ね刷りをする、減法混色を使う
  • 重ね塗りの網点の大きさによって色が変化するため、それらの組み合わせによる色は無限に近く、網点から反射する色光は加法混色を形成して目に入るので発色効果は豊か

塗料

  • 塗料を使用する第一の目的は、木材や金属の表面をガス分や水分、その他の外的条件の影響による侵食作用やさび、傷つきなどを防止する保護作用としてであり、用途において展色剤が組み合わせられる
  • 塗料も色材としての顔料と流動性・乾燥性を付与するための展色剤からなるが着色の仕方が様々でありる
  • 塗料は物質の美粧化や表面の平滑化による光沢効果なども付与し、安全標識などの特殊な目的にも使用される
  • 日本では縄文時代から赤色や黒色の顔料を使った漆塗料が土器や木工品に塗布されている
  • 油性塗料は油ペイントやエナメル、油性ワニスを使った塗料で、塗膜には光沢があり、家具や室内の塗装、金属製品への焼付塗装などに用いられる
  • 合成樹脂塗料にはアルキド、ビエール、エポキシ、ウレタン、ポリエステル、などの樹脂分を展色剤としたものがあり、油性塗料より強靱で耐性にすぐれる
  • ワニスは顔料を含まない液状のワニス
  • 水性塗料にはエマルジョン、コロイダルがあり、有機溶剤が多量に含まれる従来の塗料の公害対策で注目されている
  • 粉体塗料は顔料、合成樹脂、硬化剤などを混合したもんで無溶剤の公害対策
  • 対象が色再現より物体を被覆する目的が大きいので顔料としては不透明な無機顔料が主で、塗料には耐光性や耐候性が要求されるので、無機顔料が適している。
  • 塗料は場合によっては何十回も重ね塗りされ、発行特性は印刷インキの場合と別ものになる

ワニス

  • ワニス(仮漆)は、木材などの材料の表面を保護するために用いられる、透明で硬い上塗り剤(塗料)である
  • 一般的には乾性油と樹脂に鉱物由来の有機溶剤、或いは、テレピン油などの溶剤を混合したものである
  • ワニスで被覆された表面は光沢を持つことが多い
  • 紀元前のエジプトでは、天然樹皮と植物油からワニスが作られ、ミイラの木棺などに塗布して保存性の向上と美粧化が行われた

プラスチック着色剤

  • プラスチック着色剤は成型以前の無色透明のプラスチック素材に顔料または油溶性染料を混入した後、加熱・成形する
  • プラスチック着色剤の種類には以下のようなものがある
    • ペーストカラー
    • ドライカラー
    • マスターバッチ
    • リキッドカラー
    • 着色ペレット

染色、染料

  • 染料の役目は、布、あるいは糸をある色に染めることである
  • 染料は水やアルコールなどによく溶解し、布地や糸の繊維間隙に浸透して染着する性質をもっている
  • 白地の布への染色には無地染め模様染めがある、これとは別にまず糸を染色してから布を織る織りがある、染織とはこの染めと織りを合わせたものである
  • 模様染めは正倉院宝物の時代に三纈(さんけち)という3種類の方法で作り分けられている、三纈には友禅染などに同じ技術が引き継がれているろうけちがある
  • 染色の種類
    • ろうけち
    • ろうを模様、模様以外にぬって染色されないように染色後、ろうを加熱除去して模様をつくる手法
    • きょうけち
    • 模様を切りぬいた板の間に布を入れて染める
    • こうけち
    • 模様部分を糸で固く結び染料をつけ、糸を切りのぞく
  • 織りとは染色した糸を、経糸、緯糸として組み合わせて布を織る作業であり代表的な織りには平織り紋織がある
  • 平織りは均一な色になるが紋織は使用する糸の種類や、経糸、緯糸のくぐらせ方の違いで、錦、綾、羅、紗など様々な種類の布地ができる
  • 布を染料液につけて染色するのではなく、染料液にでんぷんなどの糊剤を加えてペースト状にしたものを、型紙や絹地の紗・金属のスクリーンなどで模様を抜き取った版を使い、布地面に押印して模様を形成し、蒸気などで過熱して染色する方法を捺染という
  • 友禅染にも手書き友禅と捺染友禅の友禅がある、どちらも染色が終わって必要のなくなった糊の成分を川などで洗い流すので水質汚染による限界が生じていた、現代では染料の代わりに顔料を使用し、糊の代わりに合成樹皮のエルマルジョンを使った顔料捺染剤が登場し、水洗工程が不要になることで水質汚濁の心配はなくなってきている
  • 固体から直接気体に変わる昇華現象を利用した染着方法を昇華転写インキという

色の測定と表示

測色の必要性

  • 色の測定にあたっては、まず何のために測定するかを考える必要がある
  • 生産者の立場から測色する場合は指定された色ができているかの同定や許容差に入っているかの確認をすることから物理測定をすることが多い
  • 多くの色を迅速に測定する場合はあらかじめ作られた許容限界見本を用いて視感判定することもある
  • 生活者の立場から測色する場合は、色を記録しておくための色の記載や、製品品質の良否の判定に用いることが多く、簡単な測色器を用いることが多いが、適当な色見本と比較することもある

視感測色方法

  • 予め作られた色見本と試料を等色することにより測定する方法
  • 観測者の視力や色覚に依存し、正常者でも個人によって変わること、年齢によっても変化すること、両眼の色覚が必ずしも同じではないことにも注意が必要である
  • 視感による測色方法は古くから行われており、現在のCIE表色系や色差式の基礎となる混色実験として使われていた、当初の視感測色器は等色視野の片方に試料の色を、もう片方にスペクトル光かフィルタを使った色光を混合させたものを見せ、試料色とスペクトル光など原色の混合色が等色になった時の原色の量から測色値を得るものである
  • また視感測色方法は古くから行われており物理測色が困難な場合に求められる、例えば空や雲、海の色にはこの方法を用いる

物理測色方法

  • 物理測色方法は測定物体を約束された照明および受光条件の下で測色用イルミナントで照明し、標準的な観測者が見たときの心理的物理量を求めるものである
  • 物理測色方法のイルミナントや観測者は実在するとは限らないし、色の評価が一致しないことがある
  • 物理測色方法には、分光測色方法刺激値直読方法の二つにわけられる
  • 高性能という面からいえば、刺激値直読方法よりも分光測色方法の方がメタメリズムを解消し正確な値を求めることができる
  • メタメリズムとは条件等色のことで、その反対をアイソメリズムという、アイソメリズムの関係にある色対はどんな光源下でも同じ色に見える

色の測定方法

分光測色方法

  • 分光測色方法は物体の分光反射率を実測し、物体の三刺激値測色用イルミナント相対分光分布、標準観測者の等色関数の値を使い、計算によって三刺激値を求める方法である
  • 物体の三刺激値はXYZ表色系で求められる、JISでは JIS Z 8701「色の表示方法 – XYZ表色系およびX10Y10Z10表色系」に規定している
  • 式中の測色用イルミナントの相対分光分布の値は JIS Z 8781「CIE側色用標準イルミナント」JIS Z 8720「測色用標準イルミナント及び標準光源」を用いる
  • 標準観測者の等色関数の値は、JIS Z 8701にあるほか、JIS Z 8782「CIE測色標準観測者の等色関数」の規格にある

  • 分光測色方法では物体の正確な分光反射率を得るために、反射率の基準は完全拡散反射面でその値が1であることことが決まりとしてあるが、完全拡散反射面は理想物体でこれに近い特性を持った硫酸バリウムやエチレンの粉末を整形した面を使う

  • 第1種分光測光器とは分散素子を用いて任意の波長で、任意の有効波長幅の単色光を取り出すことができるもので、光の相対強度が測定できる測光器である
  • 第2種分光測光器とは分散素子と多くの受光器を並べたアレイ型検出器を組み合わせ、ある波長範囲の波長ごとの信号を短時間で得るものである、測定装置の安定性と耐久性がよいことから広く用いられている
  • 測定装置の小型化と高速化のため、第2種分光測光器を用いた測色器が広く用いる、ただし小型化のため幾何条件が規定と一致しないことがある

  • 分光測光器の波長目盛り、有効波長幅は基準で校正する必要がある

  • 測定光波長域に吸収を持つホロミウムディディミウムガラスフィルタを用いて波長を校正する
  • 透過試料が測定できないときは、分光反射率に変化のある反射試料を他の分光測光器で校正する
  • 光源の測定や物体の反射率、透過率は値がすでに知られている標準光源や標準白色面で校正する
  • 光源色測定用の分光測光器の測光値は放射量について校正する
  • 放射量とは放射エネルギーと時間的、空間的な量を組み合わせた量、実際には国が検討した分光放射照度標準電球から目盛り定めした標準光源を使う

刺激値直読方法

  • 刺激値直読方法では、測定器の光源の相対分光分布、受光器の分光応答度三刺激値フィルタの分光透過率を組み合わせた分光特性が測色イルミナントの相対分光分布、標準観測者の等色関数の積に比例するように調整された測定器を用いる、すなわち計器の指示に直接三刺激値を表示する方法である
  • 刺激値直読方法の測色は以前は広く使われたが近年では三刺激値フィルタの調整が面倒なこと、分光測色方法で使う第2種分光測光器を用いた装置が普及したことから正しい測色値をも取れる装置としては利用されない、ただし同種の試料を比較するときや、2波長3波長比較方法では短期間で制度よく測定できる

色の測定の実際

1) 反射面のただしさ

  • 反射率の正しさは基準面としての完全拡散面に近い特性をもったものを(すでに反射率の値がすでに知られている)標準白板としてそれとの比較で測定される
  • 完全拡散反射面は理想物体で実際には、近い特性のある硫酸バリウム四○化エチレンの粉末を成形した面を標準白板として用いる
  • 標準白板の分光反射率のトレーサビリティは確立されているが、45度証明、法線受光の場合の反射率のトレーサビリティは確立されていない
  • 標準白板を用いて変角光測定によるか、同じ幾何条件で求めた放射輝度係数から換算する
  • 測光尺度の直線性は遮光板を光路中に起いて信号を判定する
  • 物体色測定用の分光測光器の測光値は分光反射率について校正する

2) 波長誤差

  • 波長誤差については、第1種分光測光器ではスペクトルランプや波長検定用フィルタ(ホロミウムフィルタ)を用いて検定し、第2種分光測光器では波長を検定、調整できないので予め第1種分光測光器で測定して、結果のずれを確認する

3) 迷光

  • 迷光とは光学機器内で、正規の屈折や反射以外の要因で生じる結像に有害な光のこと
  • 迷光がないことは測定の前に試料面に暗黒帯をおいて測定値が0になるのを確かめる、凹凸があったりするとずれるので注意が必要
  • 人間の眼は暗い部分に特に敏感であるので0点付近の誤差はできるだけ除いておくべきである

4) 偏光による誤差

  • 偏光とは電場および磁場が特定の(振動方向が規則的な)方向にのみ振動する光のことである
  • 測色器全体としては偏光特性があっても構わないが
  • 近年、液晶ディスプレイやホログラフィなど光の反射の特性である偏光を利用した製品が多くなっている
  • 偏光を利用した製品の場合、測定器と製品の偏光の関係で結果がまちまちになり、測定器と製品の間で偏光を解消しないと正しく測色できない

5) 反射光の空間分布

  • 物体表面からの反射光は鏡面反射方向に集中し、均等に拡散されると考えられていたが、実際はそうでないことがわかった

6) 蛍光

  • ある物質にある波長域の光を照射した時吸収された光が波長を長いほうに変えて再放出される現象を蛍光(燐光)という
  • 蛍光には白いものをより白くする蛍光増白と、そのもの自体の反射色と蛍光が加算されて鮮やかな黄、オレンジ、赤、赤紫を呈する有彩蛍光色がある
  • 現在、白色の紙、布地のほとんどは蛍光増白剤が使用されていて、これらは近紫外部の放射によって励起される青緑色の蛍光を発するため、より白く見える
  • 有彩蛍光色は標識やスポーツウェアなどに使われ、可視波長域の光によって励起される蛍光を発するため鮮やかに見える
  • 蛍光色は照明光の相対分光分布に依存するので標準イルミナントD65で評価することが多い

7) 干渉、回折

  • シャボン玉や水面の油膜の色が干渉によるもので観察方向によっていろいろな色に見えることは知られており、工業的に応用したものにカラーステンレスパールマイカペイントがある
  • カラーステンレスでは表面にごく薄い酸化皮膜をつけ、金属面からの強い鏡面錯乱光に薄膜の干渉色が重なって金属感のある鮮やかな色になる
  • パールマイカペイントは酸化チタンの薄膜による干渉色を利用したもので下地のペイント色と干渉色が加算され観察方向によりいろいろな色に見える、近年では多くの自動車の外装に用いられている

8) 試料表面の形状

  • 糸や織物などのように、組織の見える試料では、照明方向と繊維、糸の方向によって測色値が変わる

9) 散乱、透明性

  • 透明性のおある物体では層内に入った光が散乱するが、散乱する方向および強度は光の波長と粒径によって変化するため、観測方向によって色が変化して見える
  • 試料表面の形状が問題になるのはプラスチックや皮膚などである

10) 試料の恒常性

  • 試料によっては変色、退色するものがあり、光の測定中に変化することもあり注意が必要

色の表示方法

測色用標準イルミナント

  • 測色用標準イルミナントは、JISのZ 8781およびZ 8720に規定されている
  • イルミナントとは相対分光分布の規定された放射であり、実際の光源であるかどうかは問わない
  • 単位のK(ケルビン)は黒体からの放射を絶対温度で表したもので、黒体以外のものは相関色温度を使用する
  • 測色用標準イルミナントには、標準イルミナント(A,D65)と、それを補う補助標準イルミナント(D50,D55,D75,C)がある
  • 標準イルミナントを実現した人工光源を標準光源とよぶ、例をとると標準イルミナントAを実現する標準光源Aは相関色温度が約2856Kに点灯したタングステンコイル電球である

標準イルミナントA

  • 標準イルミナントAは一般照明用タングステン電球の照明を代表するもので、相関色温度が約2856Kである

標準イルミナントD65

  • 標準イルミナントD65は平均昼光を代表するもので日本の昼光とも符号する相関色温度が約6500Kのものである、特に蛍光色を測色するときに使われる照明として知られる
  • 標準イルミナントD65を実現する人工光源は今のところないが、この目的のため常用光源D65が作られている

標準イルミナントD50

  • 標準イルミナントD50はCIE昼光のうち温度が5000K

標準イルミナントC

  • 標準イルミナントCは相関色温度が6800Kの平均昼光で北半球では北窓からの昼光を代表
  • 標準イルミナントCも以前は標準イルミナントとされていたが最近では信頼性に乏しいという理由で補助標準イルミナントCとなった

測色標準観測者の等色関数

  • 2つの等色関数を設定しているのは視野の違いにより眼の感度がずれ、知覚も変わってくるためである

CIE 1931測色標準観測者の等色関数

  • 明可視の順応状態で観測者の眼に対して張る角が1-4度までの視野に関して、正常色覚を持つ観測者の等色関数を代表するもので、2度視野の等色関数ともよばれる

CIE1964測色補助標準観測者の等色関数

  • 正常色覚を持つ観測者の眼に対して張る角が4度を超える視野に対するもので、10度視野の等色関数
  • 10度視野の等色関数は、2度視野のそれと比べて短波長側に応答度が高くなっており、白色の識別に適している

色の差の測定と表示

測色の目的

  • 色差には均等色空間内の距離である知覚的色差の他に、決められた色から許される範囲の色差であるかどうかを問題にする許容色差がある、許容色差は工業製品の管理上問題にされる色差である
  • 染色物の変退色における色の変化も1つの色差ととらえられる
  • CIE表色系は、色の絶対値を表示するのには適しているが、色差の表示は不便である、これは色度上における色の距離が知覚される色差とかけ離れているためである、このため知覚される色差に比例する値を求める試みが古くから提案されている

均等色空間と色差の表示

マクアダム

  • 自作の視感色彩計を用い、2度視野、同一輝度条件で、特定の色に対し種々の方向から加法混色による等色実験から、色度図上の2点の距離にばらつきがあることを測定した
  • ばらついた測定値の標準偏差を求めそこから標準偏差楕円(マクアダム楕円)を求めたところ、この約3倍が最小識別色差になることがわかった
  • xy色度図の射影変換で求めた色度図では分散楕円がどの位置でもほぼ円に近い形になっており、この色度図を均等色色度図とよぶ
  • 色度図上のどの位置でも、これが半径一定の円になれば2色間の距離と色差が比例し等色差性が保証される
  • マクアダムが作ったuv色度図は非等色差性を補い、かつ変換式が易しいためCIE1960UCS色度図として勧告されている
  • このuv色度図に明度の均等性をもたせ、CIEが1976年に均等色空間として勧告した色空間で印刷分野などでよくつかわれるのはLuv*色空間である

明度関数明度指数

  • 均等色度図彩度および色相について均等な差を表現するものであるが、色差を正しく表示するには明度も含めた色空間が求められる
  • 白から黒までの無彩色の段階を感覚的に等しくなるように選んだとき、その段階と視感反射率の関係を示したものを明度関数とよぶ
  • 代表的な明度関数にはマンセルバリュー関数がある
  • 明度関数は明度差についての等色差性を表現するものであり、明度関数背景の明るさによって大きく変化する
  • xy色度図の不均等性をかなり改良した均等色度図に明度の均等性を含めた表色系のことを均等色空間とよぶ、この均等色空間で明度に対応する座標を明度指数とよぶ

CIELAB, CIELUV

  • JISでは均等色空間としてCIE1976Lab色空間(CIELAB)とCIE1076Luv色空間(CIELUV)を規定している
  • CIELABアダムス-ニッカーソンの色空間を発展させたものであり、後CIELUVマウアダムの均等色度図であるuv色度図を発展させたものである、CIELUVは産業界で広く色差を求める場合に使われる
  • CIELABLは明るさ、ab各々色度座標上の色相と彩度の位置関係を示しており、これらは物理量心理量の関係を立方根で表しているので、反射率のごく低い部分については補正が必要だが、修正式はX,Yの値に伴ない規定されている、また10度視野の時はX,Y,Zの代わりにX10,Y10,Z10を用いる
  • CIELABの明度指数**L***は視感反射率Yの立方根の関数を用いている

  • CIELABの色空間はマンセル表色系の修正の時にもこの空間で平滑化がなされた

  • CIELABやCIELUVの空間にマンセルグリッドをおいてみるとやや歪む、そこでCIE色差を心理メトリック量の明度差、彩度差、色相差に分解して補正した色を考案し、CIE1994色差色として提案している
  • CIELABでマンセル表色系を置点してみると、原点と色座標との明度が彩度の相関量に相応しており、これをクロマという
  • これらの色差式から導かれる色差は均等色空間における2点の距離を指すので、知覚色差と表現できる、ただし工場製品の品質管理という点からは目標色からの色ずれに相当する許容色差という側面が必要になる
  • 許容色差(色ずれ)において、変退色の判定には変退色用グレースケールを使う、変退色用グレースケールはCIELABもしくはアダムス-ニッカーソンの色差式に決められた1号から5号までの灰色色差対と、変退色する前後の見本とを比較して色差の大きさを判定する
  • 視感比較で色差を判定する場合、表面上に光沢がある時やメタリック仕上げの時は注意して比較しないといけない、かつてニッカーソンはかつてマンセル表色系の三属性の差から退色指数を提案した

CIE以前の色差式

  • 現在ではCIEの色差式を使うことが多く、光源や視野について細かく約束されていない

ハンターの色差式

  • ハンターの色差式は補助標準イルミナントCにおける三刺激値X, Y, Zの値から求められ、他のイルミナントに対応させるためには、L, a, bを算出する際の係数を変更する必要がある

アダムス-ニッカーソンの色差式

  • 三刺激値をマンセルバリュー関数を用いて変換したもの
  • JISでは「色の表示方法-物体色の色差」としてLab表色系およびLuv表色系の色差が定めてあるが、ハンターの色差式の他にアダムス-ニッカーソンの色差式も参考としてあげている

CMC(l:c)色差式

  • 英国染色業界が提案したもので、色差の明度・彩度・色相成分の重み付けを変化させ、白に近い色について等色差性をよくしようとするもの
  • JISの「色の表示方法-物体色の色差」で記載されている

白色度と黄色度

白色度

  • 白色度は白さの度合いを指し、最も好ましい白は完全拡散反射面とされる
  • 白色度は対象物の分光放射輝度率、またはそれから求めた三刺激値および色度座標が完全拡散反射面にどれだけ近いかで評価される、単純には三刺激値のYの値を白色度とする
  • 白色度の定義としては色立体における白色点から試料の点までの色差で表すとの考えがある

青みづけ

  • 代表的な白色度式はW=4B-3GでありこのGは緑色反射率と呼ばれる、ただしこの四季は青みづけの効果を過大評価するきらいがある
  • 白色度において染色物やタイルなどは青みをつけることでより白さが増す、この青みづけでは輝度が下がって白く見える

蛍光増白剤

  • 20世紀になると蛍光増白剤が出現し、白さの見えを大幅に変化させた、繊維製品はこの蛍光増白剤を用いて白くすることが多い
  • 蛍光増白物を含まない場合は白色点は完全拡散反射面になるが、蛍光増白物を含む場合は好ましい白の点が変わることが実験で明らかになり、その点を推測することも行われた

ISO白色度

  • 漂白、青みづけ、蛍光増白など手法が変わることによって現代では評価方法としてISOブライトネスISO白色度)が国際規格として広く使われている
  • ISO白色度の指数はその値が大きいほど白さの度合いが強く、色味指数はこの値が大きいほど緑みが強く、負の方向へ大きいほど赤みが強い
  • ISO白色度の値を保持するため、試験研究機関の格付けと、試験装置の校正方法が定められている、照明光に補助標準イルミナントCを標準することになっている

黄色度

  • 白に近い反射物体では分光分布の短波長部の吸収が黄色みの原因となる、これは光や化学的な影響によて起こる品質劣化が多い
  • 紙工業製品の白さを判定する際に規格に応じた積分球式の測定器で、完全拡散反射面に対する、測りたい製品の白の反射率を測定する

流行色

  • 最近の日本でも以下のように時代によって色に対する人の好みは変わる

    • 1960年代後期から70年代初期に一斉を風靡した黄色
    • 74年前後の不況時代に流行った茶色
    • 85年前後の白
    • 87年前後の黒
    • 90年前後に人気色になったベージュ
  • 流行色とはfashion colorと表現されるが、fashionの語源はラテン語のfactioに由来し、行為、作る、党派などの意味がある

  • 流行色には世の中のムードを反映している
  • 流行色には信号や国旗の色のように規格化、拘束されることはない
  • 流行色は衣服や装飾だけでなく広範囲の概念
  • 流行色の発生要因として3つの人間の欲求がある、それは変化要求、同調化要求、個別化欲求である
  • 変化要求は人間の好奇心や、冒険心から起因する
  • 同調化要求は仲間と同一化し仲間意識を満足させることから来るもので、逆に個別化欲求は他人と違うことによる自己顕示欲を満たすために来るものである
  • 同調化要求、個別化欲求の両方は相反するが、様々な状況においてどちらかに優勢化されながら、全体のバランスの傾き、進行、変化を繰り返す(バンドワゴン現象)
  • バンドワゴン効果とは、ある選択が多数に受け入れられている、流行しているという情報が流れることで、その選択への支持が一層強くなること(「バンドワゴン」とは行列の先頭の楽隊車のことであり、「バンドワゴンに乗る」とは、時流に乗る・多勢に与する・勝ち馬に乗る、といった意味)
  • 流行色の採用は個人においても集団においても一様ではない
  • 流行色を予測するために必要な要素が3つある

    1. 生産・販売段階の色彩動向実績
    2. 生活者のライフスタイル変化動向
    3. 生活者の欲求イメージと色彩の相関など
  • 基本的に未来予測は企業内部で実態調査をもとに作り出す作業であるが、日本で唯一の公益的立場で活動しているのが日本流行色協会(JAFCA)が予測情報を発表している

  • ファッション情報には素材の3要素があるが、JAFCAはそのうち色彩を中心とした情報機関の受信、発信を行っている
  • JAFCAは活動として国内の市場動向の分析の他に海外情報機関とも連携しており、その主なものが国際流行色委員会インターカラーである
  • インターカラー(国際流行色委員会)には2000年時点ではJAFCAを含めて世界18カ国の機関が加盟している
  • 流行色に関する情報は、結果レベルの情報と、予測レベルの情報とにわけられる
  • 予測レベルの傾向色情報については予測色フォーキャストカラー、誘導色ディレクションカラー、奨励色プロモーションカラーと細分化され、これらは流行色予測情報機関からカラーサンプルにまとめられて、公的機関をはじめ企業レベル、さらに個人レベルに各種発信されている
  • カラーサンプルパレットは以下のような構成になる

    • main base color (主要基調色)
    • base color (基調色)
    • assort color (従属色)
    • accent color (強調色)
  • 流行色は生産に先駆けて必要で2年前から情報発信されており、産業界レベルでは大量生産、大量販売や職業の専門化よりによりいちはやく流行色のトレンド情報を入手し予測することが重要である

  • シャーベットトーンとは1962年に大流行した色で、62年春秋ウイメンズウェアのカラーテーマとしてJAFCAが提案したもので、ペールからライトへ色調変化させたクールな色の組み合わせ、前年のダーク系の冷たい色の展開のあとに冷たくて甘いパステル調のシャーベットトーンを提案する戦略に一般生活者がうまくのった例である

技術革新の採用者分類

  • 流行色は一時的な社会慣習であるが、その変化仮定は人々の採用するタイミングで分類でき、ロジャースの分類では5種類に分けられている
分類 英語名 割合 内容 詳細
革新者 innovators 2.5% 先駆者、開拓者 いわれいちはやく物事を採用する人
初期採用者 early adopters 13.5% 先導者 オピニオンリーダー、ファッションリーダーとして採用する人
初期追随者 early majority 34% 模倣者 ここで採用する人が大衆レベル
後期追随者 late majority 34% 保守主義者 話題や人気の商品に積極的に対応しない人
遅滞者 laggards 16% 伝統主義者 新しい物事に順応しない人
  • ひとりの人間がすべての面において同じ採用段階になるわけでなく、例えばファッションにおいては初期採用者になるが、インテリアについては後期追従者になるなど同じ人でも一応ではない

5章 カラーコーディネーターの視点

カラーリサーチの理論と手法

カラーリサーチの果たす役割

現状の把握のために

  • ある対象物のの色彩分布配色傾向を調べたり、人々の色彩に対する嗜好やイメージを調査することをが重要であり、このような作業をカラーリサーチと呼ぶ
  • カラーリサーチを行うには調査目的を明確にし、客観的な立場で色を把握することが重要
  • 目的明確であれば調査を行う集団の選択や、蓄積されたデータが数値としてどのような意味を持つかを確認でき、複数のデータから集団特徴を表す数値に置き換える必要性が見えてくることになる
  • 色彩の心理的評価とは理性的な感覚である色彩を数値に置き換えて客観的に示すことである
  • 人には好き嫌いのような心理の変化があるため、この変化をある程度予想し制御することが調査結果に妥当性を持たせる
  • 色彩は、人々の情緒を著しく左右し、心理的な快不快により商品の購買意欲に影響を与える
  • カラーリサーチは新規に色彩を施したり、改善するためだけでなく現状を正しく把握するために重要で、色彩統計をとったり既存の色材を収集するなどの作業が必要になる
  • 色の発想にはを前提とした発想と、を前提した発想があり、量を前提とした発想の事例では、市場で主流を占める色は何かを調べその色を採用するといったことがあげられれ、質を前提とした発想では色彩の価値や意味を新規に作り出したり付加するというものがあげられる

カラーリサーチの2つの視点

  • カラーリサーチをする場合は、2つの視点から行われる

    1. 出回っている色のや環境に占める割合など、自然物、建築物、商品など物の色が調査の対象になる場合
    2. 人々が色彩に抱く心理的効果印象など、色彩を見る側の人が調査の対象になる場合
  • 消費生活が成熟した現代では色彩の社会的関心が高まり、生活者は自ら色を楽しみ、色を通して自己表現しようとする、その生活者に対し、わかりやすく色彩政策を表現することが企業間競争のテーマになりつつある

カラーリサーチと表色系

  • カラーリサーチを行う場合、特に自然物、建築物や商品など物の色が調査の対象になる場合は、その目的にあったカラーコードや表色系を用いて使われている色彩や分布量を調査する、日本国内ではマンセル表色系ヒューアンドトーンシステムがよく使われる
  • マンセル表色系は色相・明度・彩度という色の三属性を細かく分類できるため、わずかな色違いでも嗜好が大きく変化する対象物に対して有効である
  • 僅かな色違いが嗜好に左右される対象としては建材、壁紙、家電商品、乗用車内外装、重衣料品、メイクアップ商品などがあり、これらの分野では明度彩度の違いによって嗜好が大きく変化し、購買量が著しく変化することが多い
  • ただ、色相-明度、色相-彩度、明度-彩度など三属性で分類しないといけない場合、全体把握がしにくいという欠点がある

純粋嗜好色と商品色嗜好の違い

  • カラーリサーチには生活の嗜好を把握し、施される色に期待する印象を特定してく作業を行う
  • 色の好みには対象物を限定しない純粋嗜好色と対象物を限定した嗜好色があり両者は必ずしも一致しない場合が多い
  • 商品の嗜好色は固定的なものではなく時代的な変動が大きいものと小さいものがあり、一例として婦人衣料、車体色などは変動が大きい

生活志向と色の嗜好

  • 色を評価するのはその時代、その地域の人たちであるため、生活の志向とは無関係ではない
  • 1962年前後のピンク、1970年前後の黄色、74年前後の不況期の茶色、85年前の白、70年中期および90年以降のベージュなど時代の生活志向との関連が深い

カラーシステムの効用

客観的把握のために

  • カラーリサーチとは見方を変えれば色を分類することであり、これには主観的なものと客観的なものがあるが、カラーリサーチにおいては客観的な立場で冷静に色を把握する必要がある
  • 数百色しかない色名のシステムでは、その数を超える分類は不可能であり、あらかじめどのくらいの制度での分類が必要かを検討しておく必要がある

再生産のために

  • カラーリサーチによる結果から、色の位置関係に着目し配色傾向を把握することができる
  • 配色傾向がわかれば、似たような製品にもその傾向を当てはめることで色彩設計のリスクを軽減できる

実用色見本帳の種類と特徴

実用色見本帳の態様と問題点

  • 色票体系はそれぞれの分野で必要に応じて生み出されたものである
  • 色はバラバラでも明度や色相の配色傾向がわかれば流用できることがある
  • 実用色見本帳の一つであるJIS標準色票はマンセル表色系に準じた色票であり、高品質の色票集である
  • ファッションの分野で普及しているSCOT-DIC
  • 色見本の代表として日本塗料工業会標準色見本帳は色見本の代表
  • 建築・インテリア向きには新建築デザイン色票がある
  • 塗料の見本帳はアメリカが豊富、家庭用の塗料の需要が桁違いのため
  • 配色調和を目的として開発された代表的な色彩体系にオストワルト体系、ヨハネス・イッテン、PCCSがある

デザイナーの色見本帳の意見

  • 見本チップ、プレゼン、配色発送、色検査、色彩管理に用いる
  • 美的感覚で勧めるが論理的理由付けは行いたい
  • 質感に対する判断力は鋭い
  • 表面効果、光沢度、透明感の適合を求める
  • 狭い色域に集中し、体系の必要性が薄く、データ蓄積の手法が定着しにくい
  • 色見本は現物が適切で色が豊富で高価な見本帳になるのは仕方がないと考える
  • 複数の色見本帳の名前を統一してほしいと考える
  • デザイナーは現実にはあまりマンセル体系を普及していない
  • 色見本帳の色数は少ない方がよい、多い方がよいという意見が共存している

配色デザインのための色彩体系

ヒューアンドトーンシステムの存在意義

  • ヒューアンドトーンシステムは色相と色調による構成となっており、いくつかのシステムがある
  • ヒューアンドトーンシステムは広義には表色系とさえるが、狭義にはその役割を満たしていない、なぜなら表色系の定義は色のものさしであり、ヒューアンドトーンシステムは配色のための道具としての存在意義が大きく、色彩調和配色手法に利用目的を設定して開発された体系だからである
  • 平面上で分布表を容易に構成できわかりやすいという長所があるが、対象物の色彩的特徴によって目的にあった独自のカラーコードを構成する必要が多々生じるという欠点がある
  • カラーコードは多くがヒューアンドトーンによる構成になっている
  • 中にはマンセル表色系の三属性との関連性をもたせたものがあり、三属性がわかればマンセル表色系に変換できるため非常に便利である
  • ヒューアンドトーンシステムでは細かな把握はしにくいが、大まかな色彩分布全体の評すを把握する用途、色相、色調の統計に向いている
  • 国内には日本流行色境界が発行しているJBCCと日本色彩研究所の調査用カラーコードがある
  • ヒューアンドトーンシステムは今後期待され充実が求められている、色彩政策による企業間競争のなかで色のイメージを伝えやすいヒューアンドトーンシステムの存在は供給側にも生活者側にも重要な共通の道具となっていくだろう

トーン

  • ヒューアンドトーンシステムの道具として要になるのがトーンの概念である
  • 色彩感情は色相よりトーンとの結びつきが強く、配色作業に書かせないものとなっている
  • トーンの定義は「色の明暗、濃淡、強弱などの調子を指し、明度と彩度の複合概念」とあり、音楽用語に由来して、色調と訳されている
  • トーンを用いる効用として次のようなものがある
    • 色相が違ってもトーンの同じ色同士は共通のイメージがある
    • 「やわらかい」「固い」などの形容詞に結びつけやすいため、色が想起しやすく色名表示にも便利である
    • 色の自然連鎖と透価値性があり計画しやすい
    • 色相・トーンの二属性で表面化できる
  • しかし、トーンに対する留意点として以下のようなものもがる
    • 規格が統一されていない
    • 範囲が曖昧で細かい分類には適さない
    • 正確な表示、分類にはものさしとなる緻密な体系が必要

オストワルト体系

  • マンセル体系と異なり純色を色立体の同じ位置に配置し、等色層面は一定の混合比で系列化されているため色の等価価値性が保たれ配色発想に適合しやすい

カラーキープログラム

  • アメリカのロバート・ドアーが考案したカラーキープログラムはデザイン業務に好適であり、自動配色にも流用できる体系である
  • すべての配色は青みがかったブルベースと黄みがかったイエロベースの2種類に分けられ、これを使い分けることで調和がとれるいう説である
  • カラーミービューティフルの著者のキャロル・ジャクションもこの説をベースに春夏秋冬を考案していると思われる
  • ドアーは自然・造形物・生活空間から肌色にいたるまで、すべてを2タイプに分けることは有効であると力説している、これは多色の被写体に青みまたは黄みのフィルタをかけて写真撮影した時のドミナント効果と同じであると解釈できる

商工会議所色彩体系の概要

CCIC

  • CCICの収録数は285色、背後に632色の基本体系が設計されてそこから選択されている
  • 全体の内訳は有彩色606、無彩色19ステップ、特殊色7色
  • 体系は色相とトーンの二属性
  • 色相環を高彩度領域24、中低彩度領域12に分割
  • トーンは等色相面を有彩色21区間、無彩色6区画、合計27区画に分割
  • 有彩色は4桁表記、トーン略号2字
  • 等色相面のトーン分割は色相分割との均整がとれていることが求められる

色彩の心理的評価に関する技法

心理的評価

  • 色彩の心理的評価とは主観的な感覚である色彩を、数値に置き換えて客観的に示すことである、色は電磁波の一部である可視光線が引き起こす主観的な感覚のため、エネルギーの強さと波長の成分から物理的に定量するだけでは十分でない、つまり物理的定義がそのまま人間の感覚的定義と一致しない

精神物理学的測定法

  • 色彩を客観的に数値に置き換えて示す場合、色彩の物理変化と人間の心的変化の関係を調べるために開発された方法が精神物理学的測定法であり、この方法で絶対閾刺激項弁別閾主観的等価値、および独立的感覚特性をもたらす刺激などが測定され、調整法極限法カテゴリカルカラーネーミング法などの手法で心の変化を誘発している物理的変化を客観的に表すわけである
  • 物理的刺激が存在しても小さい場合は感覚の変化を引き起こさないことがある、その境界を絶対閾という、逆に刺激が上昇すると頭打ちになる、その境を刺激項という、また刺激の変化の量が小さいと感覚の変化も感じない、この変化量の最小値を弁別閾という
  • 例えば、照度を上げることで明るさの感覚は上昇するが、刺激項を超えると明るさ感は上せず、別の感覚であるグレアの感覚に変わる
  • 色彩学においては明るさ、波長、刺激純度、色度の弁別閾が重要であり、色のそたを微妙に変化させる場合には弁別閾に注意を払う必要がある
  • 物理的刺激が異なっていても感覚的に同じように感じる刺激値が主観的等価値である
  • 主観的等価値の例としては、同じ直径の黄色の円と黒色の円を比べると黄色の円の方が大きく見える、これを同じ大きさに見えるように変更した黒の直径が主観的等価値となる、この例は人間の心理的効果の違いによる例であり知っておくことが重要である

調整法

  • 物理的刺激を任意に調整しながら目的の感覚を求める方法を調整法という、例えば収縮色である黒い丸の直径を自由に調整し、膨張色である黄色い丸の直径と同じ大きさにみえるようにする、何回かの調整の後、その平均値が主観的等価値となる
  • 調整法の欠点は作業になれないうちは調整に時間がかかることで結果データにばらつきがでてしまうことである

極限法

  • 刺激を一定方向に変化させ、その刺激ごとに明るさを感じたが、何か差異があったかなどを報告しながら閾値等価値を求める方法を極限法という
  • 刺激が一定方向に提示されるので判断は楽であるが、欠点はそろそろ目的の刺激が出されるのではないかとう予測が働き結果に影響をもたらすことである

カテゴリカルカラーネーミング

  • 色の見えを測定する方法としてカテゴリカルカラーネーミング法があり、4つの色名を11種類の基本色彩用語に増やし、この中の一つで色の見えを表すものである

心の変化の数値化、尺度構成法

  • 精神物理学的測定法は作品の良し悪しにかかわる場合には利用できない、作品から受ける好き嫌いや良し悪しといった心の変化を数値化する方法が尺度構成法である
  • 尺度構成法には多くの方法があるが、その中で比較的評価が容易なのは順位法(品等法)、サーストンの一対比較法、等分法の3つである
  • 人の心の変化を数値化する場合、数値が持っている情報が尺度により異なる、例えばクラス分けに使用される1組・2組、順位を表す1位・2位、距離を表す1m・2mは同じ数値でも尺度が違う
  • 尺度構成法では心の変化の尺度としての、数値の尺度を4種類に分類しており、どのような判断を求めるか、求める結果がどの尺度に属するかで使用される、実用的には判断が容易に得られた尺度で、数学的に操作しやすいものが望まれる

尺度

  1. 名義尺度
    • AとBが等価かどうかを決めるもので、例えばある色を暖かいか、冷たいかに分類することである
  2. 順序尺度
    • AとBとの大小関係、順位を決めるもので、作品群を好ましい順に並べるのはこの尺度におる
  3. 距離尺度
    • AとBの距離、差だけに注目したもので、この差はAB間にのみのもののでAはBの何倍とは言えない
    • マンセル明度は知覚的な明るさの差が等しくなるように作られたもので、距離尺度を用いる代表的なものである
  4. 比例尺度
    • 原点を決められる尺度のことで、AとBの3倍というように比率を求めることができる、使うことは少ない

順位法

  • 色彩の心理評価に関する技法として、順位法は品等法とも呼ばれている
  • 複数の作品群の1組の刺激をある基準にしたがって複数の人が順位をつけ、その合計から順序尺度をもとめる方法である
  • 比較的簡単に尺度が計算できる利点があるが、もとめられた尺度が順序尺度なので統計的検定や予測に限界がある

等分法

  • マンセル明度のようにある刺激の中間を求め、等間隔となるように尺度を求める方法を等分法とよぶ

サーストンの一対比較法

  • 心の変化を直接数量化する方法で、刺激対のすべての組み合わせを取り出し、大小関係で評価する、しかし尺度をもとめる刺激が増える対として判断するため、判断回数が非常に大きくなるという欠点がある
  • しかしそれでも比較的多く利用される

SD法

  • 精神物理学的測定法尺度構成法は心の単一の変化に注目して定量化する方法であるが、色彩が与える心の変化は単一でなく心の複雑な変化の要素を推定するのがSD法である
  • SD法は心理学者のオズグッドが1952年にコミュニケーションの研究の方法として開発したもの
  • SD法では意味空間が3次元で表され、オズグッド言語圏文化圏を超えて一般性を持つことを主張している
  • 評価性因子、力量性因子、活動性因子にわける方法を提案している
  • SD法では異なる形容詞の間の評価尺度を使う
  • まず調べる対象の要素を表す形容詞を反対の意味を持つ形容詞と対にして多数集め、それらの対をカテゴリー尺度で複数の人が評価を行う
  • どのような形容詞を使うかによって結果が左右するので、評価項目の設定は慎重に行う必要がある、同様にどのようなカテゴリーを使うかの評価尺度も重要である
  • この評価から形容詞間の相関係数をもとに評価を決めている根源的な心理的要素を因子分析という統計方法で求める
  • 因子分析では、評価項目感の相関関数を計算し、因子数を決定し、そして評価尺度にするための最終的作業のの命名により結果の解釈が導かれる、の命名については因子のばらつきがどうなっているかで、そのままでは解釈が困難なときもあるため、因子の直交性を保つか崩すかでの回転のさせ方が変化するわけである
  • 適応する手段としてはまず、調査内容の明確化、評価項目の選定、評価尺度の選定、評価用紙の選定となる、次に実験の実施でデータの収集し、それを集計して因子分析へ進めて心理空間内の座標とし、総合的に相互関係を明確にして結果の解釈となる、その最終段階として、さらに精神物理学的測定法尺度構成法で解析し、より整合性のある結果の解釈とする

データ処理の基礎知識

データの検定

  • データの平均値だけでは不十分で、データが平均値の周りをどのように分布しているのかの標準偏差を知る必要がある、標準偏差とは平均値から個々のデータの差を平均したばらつきの代表値である
  • データの散らばりを表したものを度数分布というが、度数分布で多くの現象を表す重要な分布に正規分布がある、その正規分布は左右対称の釣り鐘形になる
  • データは平均値とその周囲の標準偏差の分布を見る、平均値が0で標準偏差を1でみるのを標準正規分布という
  • 統計学では絶対に誤りが起こらないとは想定されていない、統計的検定ではある仮定を設け、その仮定が正しいと判断をするときには、その判断が間違う確率を考えるがこの確率のことを有意水準という
  • 絶対的事実で差があるのに差がないとされるのを第一種の誤り
  • 差がないので差があるとしてしまうのを第二種の誤り

カラーコミュニケーション

  • 実際に色を提示するといった直接的手段を用いず、離れたところにいるユーザに色情報を伝える場合に通信手段を用いて色彩情報をやり取りすることはカラーコミニケーションの範疇である
  • カラーコミニケーションは大きくわけて3つの手段がある

1. 色名で伝える

  • 日常よく行われる方法で、特別な機材を必要とせず誰とでもカラーコミュニケーションが可能である
  • ただし双方が色名を正しく理解していないとカラーコミュニケーションが成り立たないので、カテゴリカルカラーネーミング法やJISの物体色の色名が使われる
  • カテゴリカルカラーネーミングバーリンとケイが色彩概念の発達を調査研究する際に用いた11種類(白、黒、赤、緑、黄、青、ピンク灰色)の基本色名(basic color term)だけ色情報を伝える方法である
  • カテゴリカルカラーネーミングは誰にでも使え、理解しやすいカラーネーミングだが、11種類だけでは情報が十分でなく、この方法で伝えにくい場合はJISの物体色の色名を使うことになる

JISの物体色の色名

  • JISの物体色の色名には系統色名と慣用色名の2種類があり、慣用色名は慣用的な呼び方で表現する色名でJISでは現在269色を決めている、両者は体系が異なるため同じ色をそれぞれが表すことがある
  • JISの物体色の色名の基本色名はマンセルシステムに対応するよう定めた色の基本的な分類用語であり、これに5種類の色相に関する修飾語や、明度彩度に関する修飾語をつける、この5種類の色相に関する修飾語が適応できる基本色名は各々決められており、例えば赤みという修飾語は、白・黒・灰・黄・紫には適用できるが、緑、青といった色名には適応できない
  • 系統色名とは物体色を統計的に分類して表現できるようにした色名で、有彩色と無彩色にわけ、それぞれ基本色と修飾語で表す
  • 物体色の色名には色材情報を十分に伝達する機能があるが、体系を十分理解していないと正確に色が伝わらない

2. 測定値で伝える

  • 色を測定には、人間の眼で測定する視感測色方法と、器機で測定する物理測色方法がある
  • 視感測色方法は試料と基準となる標準色票を見比べ試料と一致する標準色票の数値を伝達する方法である
  • 視感測色方法で屋外の対象物の色を測色する場合、外光や環境の変化に影響されやすいので測定条件や使用した標準色票を必ず記録として起こしておく必要がある
  • 屋内においても照明条件や観察条件などJISに規定された条件を守って観察しなければいけない
  • 標準色票にはJISのほかNCSなども用いられる
  • XYZなどの色を測定して伝える方法がある、測定の誤差には注意が必要
  • お互いが測定器をもって確認するのが理想である

  • お互いがそのシステムを知っていないと伝達できないので色彩の専門家同士でないと使えない

3. 画像で伝える

  • 色彩情報を画像として伝達する場合、送られた情報をモニタに移して再現する方法とプリンタに印刷して再現する方法がある
  • 基準となるの違いによって同じ信号から作られたものでも違う色になるため、画像など物を使って伝達する方法ではプリンタや画面の情報を予め確認しておくことが必要である
  • モニタは3色の蛍光体が最大に発光した物を白と考えているがプリンタで印刷されたものは照明光源を100%反射したものを白と考えている

プリンタ

  • 色を紙の上に再現する装置はカラープリンタと呼ぶ
  • C.M.Y3色のインクの面積を変えて紙の上に印刷するインクジェット方式と、送られた信号に応じて感光体に電化パターンが作られそこに付着されたC.M.Yトナーを熱で紙に定着させる電子写真方式がある
  • 電子写真方式は信号によって紙の上に原色がそのまま転写されたり、2色ないし3色が重ねられ面積を変えることで減法混色中間混色が複合的に知覚される
  • 印刷された紙において、xy色度図上で再現される色を見ると、原色と複合的に知覚される8色(C,M,Y,R,G,B,BK,W)の占める面積割合の比率が目立つ
  • 昇華性染料熱転写方式はインクフィルムに塗布された染料インクを信号値に応じてインクの大きさを変えないで濃さを変えて紙に転写する方式
  • プリンタでは照明光源を100%反射したものを白と考えており、この基準となる白が大きく異なると同じ信号から作られた色でも違う色になる

モニタ

  • コンピュータのカラーモニタには現在、CRT(陰極線管)とLCD(液晶表示装置)の2種類があり、現在ではCRTからコンパクトで消費電力の少ないLCDに切り替わっている
  • CRTとLCDでは同じ色でも異なって見え、また同じ機種であってもモニタでは手元で明るさや色身の調整が可能なので、情報の送り手と受け手が買ってに調整してしまえば正確な再現は望めない
  • またモニタや印刷を見る際には部屋の照明の光源も重要な要素となる

CRT

  • CRTでは電子銃から発射された電子ビームがRGBの3色蛍光体をモザイク状に並べてある発光面に発光させてドットとして色を再現する
  • 信号の段階に応じて3色の蛍光体の発光強度が応じ、いろいろな色が再現される
  • CRTで発光した蛍光体は非常に小さく、人間の眼の空間的分解能力を超えて中間混色が成り立つため、人の眼には多くの色として感じ取られる、この混色された色とRGB発光体の発光輝度は計算式によて求められるので、再現したい色の三刺激値がわかれば発色のための発光比率もわかる
  • CRTで発光した3色の分光分布は、青や緑は釣鐘型をしているが、赤の発光スペクトルは640nm付近にピークがある非釣鐘型をしている

LCD

  • LCDはバックライトと呼ばれる白色光源を用いて、RGBのフィルタに入るバックライトの光の透過率液晶分子が変化させ、RGBの光の強度に変えて色を再現する、この仕組みによってLCDはCRTよりもコンパクトな作りが実現できている
  • LCDは観察時に中間混色を利用している
  • LCDのバックライトとしては主に440nm, 540nm, 620nm付近の3つのピークを持つ三波長蛍光放電管が使用される
  • 色彩画像の情報量はコンピュータの性能に依存し、情報量の単位はbitが使われる、bitが多いほど鮮明な情報が送ることができる

色の意味と配色

  • 赤から血や火事を連想することを色による連想という、この色による連想には難易度があることが知られている
  • 色の連想は通常、具体的事物を示す言葉と、ある観念を表す抽象的言葉からなる、どちらかというと前者は色の知覚や記憶と関係が深い
  • 色の連想は文化の違いがみられる、青に対して日本の学生は、科学、涙、男性などを連想し、アメリカの学生は信任、協力、調和、献身などを連想する、アメリカの学生の連想は宗教心が刺激されたものと考えれれる
  • 人によって鮮やかな赤・黄・青・白・黒などは連想される言葉は多くあるが、灰みの鈍い色や暗い色に対しては言葉が少なくなりがちで、その結果、高彩度色ほど持つ意味が大きく、中でも赤、青、黄の3色が色の意味体系の中核をなしている
  • 色の連想と象徴に関する分析結果をみると活気と沈滞さわやかさとあくどさ理性と感情の三因子が抽出される
  • 活気は純色、沈滞は濁色、さわやかさは明清色、理性は寒色、感情は暖色とよく対応するので色の連想も形容詞尺度を使ったSD法の場合と同様に3次元からなる意味空間上にで体系的に表現できることになる
言葉 色の連想
活気 純色
沈滞 濁色
さわやかさ 明清色
理性 寒色
感情 暖色
  • 色における調査での注意として色名だけを見せるのではなく、色紙か色見本を見せること、また、試料の大きさ、背景、照明、観察時間などは結果に影響を与える要因となるのでJISの比色方法に従うことが望まれる、結果を左右する要因には年齢、性別、地域、人種などの静的要因とライフスタイル、パーソナリティなどの動的要因がある
  • 色の意味は外的要因、例えば、気候、風土、経済、文化などよりも内的要因、例えば多くの遺伝子を共有するホモ・サピエンスとしての事実により強く規定されることを示唆するものである、このことは色彩を介しての国際的なコミニュケーションが可能であることを示している
  • 国際的なコミニュケーションとして色を使うには色における文法をしらないといけなく、ある抽象的概念をわかりやすく伝えるには色の組み合わせ(配色)ではなく、どの色を用いれば良いかということである
  • 配色によってある概念を表現するには配色を構成する色それぞれがある概念を表すのにふさわしいことが必要とされる、そうでない色や反対の意味を表す色が加わると逆に効果が低下したり、相殺されてしまうことになる、例えば白と黒、赤と青、青と黄といった性質が著しく相反する色の組み合わせは国旗はともかくとしてある特定の意味を伝えるにはふさわしくない、ある概念を配色で表現するには同系類似の色相を使ったいわゆるトーン配色が有効である
  • 色彩と商品は歴史や伝統に左右される
  • 四季を色に例えることはたいていの国に存在することから、色彩の持つ内包的意味が言語体系を形作る根源をなしているといえる
  • 中国では五行説に従い、四季を青春、朱夏、白秋、玄冬と分けた、このうち日本でも使われているのは青春だけである、青はあお色、朱は赤、またはあけ、白は白いまたは明らか、玄はかすかで見えにくい黒いの意味を表す
  • 四季のイメージを配色する場合には平安時代の襲の色目などを参考にするとよい、パーソナルカラリストは同じような色がそれぞれの四季に重ならないような配慮が必要
  • 黄色は反逆の意味があったが、最近ではイスラエルで復興の証として支持されている、色の象徴や意味は不変ではない

色彩嗜好

  • 人間の色に対する好悪感とその理由は昔から数多くの研究がされているが、方法としては一対比較方、順位法、カテゴリー分類法などの相対的判断法のほかに、好悪判断法のような絶対判断法などがある
  • 人間の色彩嗜好には普遍的順序が存在し、超文化的な生物学的因子を反映するとした立場の学者に、アイセンク、ギルフォードなどがいる、色彩嗜好でギルフォードのように色の三属性の関連から言えば純色を好むとも結論できる
  • 色彩嗜好は感情を伴なう過去の体験に基づくものではあるが、色彩の使われ方に対する非感情的な連想や習慣、個人的な評価や偏愛という要素が反映されている
  • 人間の色の連想や象徴は、国や文化圏によって異なるに違いないことになるが、調査の結果多くの国または地域間で色彩嗜好7割が一致し、違いは3割2割とどまった、内的要因に強く規定されることを示し色彩を介して国際的なコミニュケーションができるということである

  • 色の嗜好はその人の様々な状況因子によるものではるが、色彩調査によってが比較的好まれるという主張は支持されている

  • 白、黒、金、銀は普遍的に使えることが多い、なぜかはよくわかっていないが、嗜好品、家電製品、化粧品、自動車などの商品のパッケージとしてよく使われる
  • は日本や韓国においても祝の席や祭りの時になくてはならない色であるが、とりわけ中国人にとって一番好感情を抱き飲食品のパッケージとしてしばしば使われる
  • に対する感情は東京・ソウル・上海・台北の学生の調査では異なっており、東京・ソウルの学生は悪しき感情を、上海・台北の学生は善き感情を持つ割合が高い

連想法

  • 色の連想を調べるには二つの方法があり、自由連想法制限連想法である
  • 自由連想法はある色を与えられた時に、心に浮かぶままの自由な考えを連想していく発想法
  • 色から連想する事物を答える方法ではなく、逆に単語や文章などの概念について色で表す方法を言語色彩同定法という、例えば会社や商品名から思い浮かべる色を聞くことである

色彩調和

色彩調和論の史的発展過程

  • まず色彩調和と配色は同義語ではない、色彩調和と色彩調和論との関係はさらに大きく異なる
  • 色彩調和とは組み合わされた色が美しく、快い感じの備わった状態である
  • 色彩調和論は組み合わされた色によって表現された美の本質を考察する学問である
  • 配色は複数の色を組み合わせる事、すなわち色の取り合わせであり、良い配色はデザインの効果を高める、配色は目的にあわせて色の取り合わせを美的に演出する技術であり、自己顕示の重いや他人の評価が加わる、一方で色彩調和では、人々はその調和のとれた色の美しさに惹かれるのである、色彩調和は美の本質の考察であって演出としての配色とは目的も立脚点も異なるである
  • 調和のとれた配色に隠された方程式の存在を見つけ出したいと思う結果、その手助けとして色彩調和論が登場する
  • ゲーテ以前の古典的な色彩調和論は色相の組み合わせで調和を問うことが多かったが、そこにフィールド面積比を持ち込み、ベゾルト、ブリュッケ、ルードなどにより視覚効果の要素が加えられ、ドイツの科学者オストワルトが画期的な色彩調和論を書く、その後アメリカの色彩学者ジャッドが過去の色彩調和から共通する原理を発見する

  • 類似の調和、対照の調和に要約できる

  • 類似の調和
    • 単一の色相の中に異なる階調をおいて生じる調和
    • 近似色相で似通った階調を見たときに生じる調和
    • 異なる色の配色で、どちらかで着色した色ガラスごしに見るときのような、支配色による調和
  • 対照の調和
    • 同一色相内の異なった階調による対照の調和
    • 隣接する色相で階調が異なる対照の調和
    • 対比の法則

古代ギリシャにおける色彩観

  • 色彩調和論は古代ギリシャまで戻るがこのころは哲学的な意味において語られていた

エンペドクレス

  • エンペドクレスは眼にある火から一種の光が発せられて対象物が見えるとした人物

アリストテレス

  • アリストテレスは古代ギリシャの哲学者
  • アリストテレスは「色のうち単純な色は火とか空気とか水とか土とかの要素につき従うものであり、空気と水それ自体は本性上白であり、火と太陽は黄であり、土の本性は白である」と論じた人、アリストテレスの考えでは色の系列は、白、黄、赤、緑、青、紫、黒の7色である
  • アリストテレスは「影に向かう夕陽を見て黒と影が光と混合されると深紅が生じる」とし色の発生は明暗混合によるとした、これは事実の観察に基づいた説ではあるが、今日的な混色原理では正しくなく、色の生起現象に対する根源的な意味付けを意図している
  • アリストテレスの考察は中世からルネッサンス、そして18世紀のゲーテにまで多大な影響を及ぼした

レオナルド・ダ・ヴィンチ

  • レオナルド・ダ・ヴィンチははモナリザの作者として有名だが、遠近法、膨張色、収縮色についての言及も忘れてはならない
  • レオナルド・ダ・ヴィンチは「あらゆる色彩は陰よりも光の当たる部分における方が美しい。光は色彩を活発にし、その性質を正しく認めさせるのに対し、陰は同じ美しさを弱め、あいまいにし、その色の認識を妨げるものである」と説いた
  • ダ・ヴィンチの遠近法の説明では眼から遠く離れた物象は眼との間に介在する大量の空気のために青く見えるので、近くの物はそのままの色で描くが、遠い物は輪郭は不鮮明にしつつ、青色を増やして描くことを説いた、このダ・ヴィンチの遠近法の観察は色彩遠近法、消失遠近法、空気遠近法まで及んでいる
  • ダ・ヴィンチは反対色の調和や明るい色は膨張し、暗い色は縮小するという視覚効果なども世に示している
  • ルネサンス絵画では一般に形態と明暗に主眼がおかれ、色彩はそれに付随するものと考えられた

ニュートン以後の色彩調和論

ニュートン

  • 色彩調和論の出発点はニュートンである、色彩調和を体系的に論ずるには科学としての色の解明とその表示方法、色材、色再現技術などが伴わなければ成り立たず、その意味では色彩調和論の出発点は科学的な解明を行ったニュートンとなる
  • ニュートンは太陽の白色光をプリズムでスペクトル単色光に分解し、さらにプリズムで単色光を再合成するともとの白色光ができる実験を示した
  • ニュートンは色と音楽の関係に注目しスペクトルが音階に対応するとした
  • ニュートンは色の調和、不調和は音が空気の振動によるように視神経からの伝達の振動の比から生ずるのではなかと疑問した

ゲーテ

  • ゲーテは自然科学の立場から色彩を論じたニュートン説に反発し、1810年に色彩論を発表、色の生理的・心理的作用を強調した
  • 色彩論の中では色彩調和について「諸要素がより集まって全体を構築している場合、その緒要素がなお見分けられる場合にはその全体を調和と呼ぶ」と説いて、6色の色彩環で色相環ではなく、プラスとマイナスの対立する性質で分け、どの色相も人間の心のありように結びつけている
  • ゲーテの色彩論は3部構成で、1部が一般的にゲーテの色彩論、2部はニュートンへの反論、
  • ゲーテの色彩論はニュートンへの反発を含んでいることが影響したためか、自然科学者からの賛同がなかなか得られなかった
  • 英国の画家のターナーはゲーテの色彩環でのプラスとマイナスの対立に応えた連作を発表している

ジョージ・フィールド

  • 染料、絵の具の製造の功績でイギリスの芸術協会から表彰され、科学者でありながらアンチニュートニアンであり、一方でクリスチャンとして手引書を刊行するなど人物の人物である
  • ジョージ・フィールドは色彩論で三原色を音楽における音階と和音に関係付けている
  • 色彩調和論は明快で、フィールドは色彩調和に面積比の概念を持ち込み、赤5、黄3、青8で無彩色が得られるという色彩調和を定量的に示した
  • フィールドの色環は三原色がそれぞれ和になって重なりながら組み立てられ中央に無彩色が置かれる、この色環はアメリカや日本にも伝えられて、明治初期の小学校教科書に載っている

シュヴルール

  • シュヴルールはフランスの王立ゴブラン織工場の技師で、ゲーテの色彩論の理論としての色彩学から初めて本格的な色彩調和論を提唱した人物とされる
  • シュヴルールは初めて色立体と色彩調和とをあわせて本格的な研究を行い、類似の調和対照の調和の2つの調和理論を発表した、シュヴルールが画壇へ与えた影響は大きい
  • シュヴルールはゴブラン織工場で青、モーヴ、灰色、茶色、黒色の仕上がりが悪いのは染色の欠陥ではく単色と配色では色の見えが異なるからだと発見している
  • シュヴルールは視覚効果が個人によって異なるものではなく物理的法則に従い、例えば隣接した色は互いに影響しあい、暗い色に囲まれた色はより明るく、明るい色に囲まれた色はより暗く見えるとした、そして補色関係の配色は対比の効果を最も強く発揮するなどの実験を行い、同時対比の法則として一般化するとともに独自の調和論を展開し、ロマン派や印象派の画家たちに影響を与えることになった
  • シュヴルールは色相とトーン及び下降調の変化による色彩体系を生み出し、類似色の調和反対色の調和のあることを指摘した
  • シュヴルールは配色を単に位相だけでなく、明るさや純度(彩度)と関連して考慮している、ドラクロア、スーラ、シニャックなどの画家へ大きな影響を与えた

オストワルト

  • ノーベル化学賞を受賞したことがあるドイツの化学者で、画期的な色彩調和論である「色彩の調和」を著した人物である、「色彩の調和」の中には調和は秩序に等しいという有名な定義がある
  • 独自の色彩体系を考案し、色立体の中から調和配色を求める方法を示し、色の体系をもって調和の条件を示した
  • 色彩体系は色相をヘリング説に、無彩色段階はフェヒナー説に、完全色と白、黒の回転混色比もこれに準じて設計されている
  • オストワルトが体系化したものを基にしたカラー・ハーモニー・マニュアルを利用するとオストワルトの色彩調和を色票で見ることが可能になる

マンセル

  • マンセルはアメリカの美術教師で、三属性による色の表示方法を考案した人物で、著書「色彩表記」の中で回転混色でグレーが得られることの重要性をカラーハーモニーとして説いた
  • マンセルはバランスポイントとしてのN5を重視し、その考えはムーン-スペンサーに受け継がれる

ジャッド

  • ジャッドはアメリカの色彩学者で、色彩の調和は3次元の配列で、知覚的等歩度に刻まれた体系上で類型化できることを示した人物
  • ジャッドは色彩調和論の中で特に親近性(なじみ)の原理が特徴的で、この中には世界各地の文化や伝統による独自の個性ある表現形式を重んじる必要性と、過去の調和論に当てはめるばかりではならないことを言及している

ムーンとスペンサー

  • ムーンとスペンサーはマンセル体系をオメガ空間に書き換えた定量的な色彩調和論を発表した人物である
  • ムーンとスペンサーの理論は美的評価を数値化する画期的なもので、美度計算は0.5を境に以上が美度が高く、以下が低いとする
  • 色彩調和論による表現は、同一配色、類似配色、対比配色の3つ

ポープ

  • ポープはムーンとスペンサーの主張する秩序の要素が対比性となっていることに対し、秩序とは本来、同一性類似性によって統一を図ることであり、逆に秩序に変化を与えるものが対比であるはず主張し、色彩調和は統一と変化との関連性のうえに成り立つもので簡単な数式での説明では無理があると批判した

アイセンク

  • アイセンクは英国の心理学者で、ムーンとスペンサーのように同一色相配色を美度が一番高いものとする理論では秩序性のみに注目したもので単調に過ぎ、実際的な評価に合致しないとした
  • アイセンクはM=O/CはM=OxCとすべきであると主張した

色彩調和の一般原理

  • アメリカの色彩学者のDBジャッドは過去の文献を丹念に調べて4つの共通する原理を指摘した
  1. 秩序性の原理 – 色と色の間になんらかの秩序が完治られること
  2. 親近性の原理 – 自然で馴染んだ色合いに逆らわないこと
  3. 共通要素の原理 – 色みや色の調子に何らかの共通の性質があること
  4. 明瞭性の原理 – 適度に色の差があり、あいまいさがないこと
  • ジャッドは、色彩の調和は3次元の配列で知覚的当歩度に刻まれた体系上で類型化できると示した

色彩書の三大古典

1) ニュートンの「光学」

2) ゲーテの「色彩論」

3) シュヴルールの「色の同時対比の法則」

  • シュヴルールの色立体はあまり知られていない
    • お椀を伏せたような黒い半球形
    • 計算上では14422色に達する
    • 三原色を第一次色
    • 中間に第二次色の橙、緑、紫
    • 第三次色に赤橙、黄橙、黄緑、青緑、青紫、赤紫
    • さらに6等分して72色相で構成
    • 中心に白、全色相が周辺に向かって純度を増す
    • 途中に基準色があり最終的には黒になる

自動配色の展開手法

自動配色の基本原理

  • 自動配色とは優れた絵画の色使いを原画として借用し多数の配色変化を生み出す専門技術で、は色相トーンの二属性で行う
  • 原画の配色バランスを保ったまま色相を移調することを「色相移調」配色バランス全体を新しい調子に変更することを「トーン移調」とよぶ

自動配色に好ましい体系と収録色数

  • 自動配色を行うにはそれにふさわしい色相・トーン体系が必要である、条件としては色の選び方が均衡のとれた体系で、作業がおこないやすい用具になっていることがあげられる
  • 手軽に使える体系としてPCCSを除いていないが、デザインで出現が多い低彩度領域の情報が不足しているので補いが必要になる、この背景でCCICが新しく生まれた

自動配色の方法

色相の移調

  • 色相の移調では配色バランスを保ったまま色相を移動する、24色相体系の場合円周360度を求める配色替えの数で割る、12配色なら30度で一つ飛びの位置に、6配色では60度、4配色では90度の位置に配色全体を移動させる

トーンの移調

  • トーンの移調では配色バランス全体を新しい調子に切り替える、原画に使われている色のトーン位置とほぼ類似型で新しいトーンに全体を移動する、チャートの上では上下にずらす、同じトーンでも明度差のある色相へ移調する場合は補正が必要になることがある
  • CCICトーン図を使ったトーンの移調では、頭上にマークした上でその位置関係とほぼ類似型に全体を移動させればよい

無彩色の扱い

  • 無彩色への移調では原則として原画のカラーバランスに準じて選択する、新しいカラーバランスに変えるなどの変化も可能である

留意事項

  • 活用には面積効果や、材質感への配慮を行い、当事者の判断での微調整が常にされなければならない
  • 色にはそれぞれ固有の色彩感情があり、使い方によっては不自然になる(緑のりんごなど)
  • 高彩度の多色使いでは移調が不可能なときがある、得に各色の面積比が変わらない場合はいずれも似通った印象になる

配色の類型と用語

色数による類型

1色配色

  • 1色においても、異素材を用いた配色であったり、素材の表面加工を変えたコンビネーションを配色扱いするものがある

2色配色

  • 2色配色はバイカラー、ビコロールなどと呼ばれるが、特に金、銀のコンビネーションで宝飾品やアクセサリー、ファッションなどによく用いられれる
  • 他には2色のボーダをバイカラーと呼ぶこともある
  • 表裏を変えるものでリバーシブルファブリックがある、日本版としては襲の色目が有名である

3色配色

  • 3色配色の代表はトリコロールであり、フランス国旗(白、赤、青)を指すのが一般的

4色配色…

  • 3色以上になると配色用語のバリエーションは少なくなる、5,6色以上になるとマルチカラー配色という用語でまとめることが多い

イッテンの色相環における配色

  • スイスの美術教育者ヨハネス・イッテンは地球儀のような色立体で配色を示し、配色調和を色数に対応して展開した
  • 色相環上で関係を対応させた180度配色、90度配色、120度配色などがある、この色相を中心に分類したものでは、色同士の関係を幾何学に対応させた言葉もよく用いられ、例えばコンプリメンタリーカラー配色、ダイアッド配色などは180度配色に分類され、テトラッド配色・正方形配色などは90度配色に分類され、トライアッド配色、トライアングル配色は120度配色に分類される

2色調和(ダイアッド)

  • イッテンの色相環の直径の両端にある補色配色をダイアッドという

3色調和(トライアッド)

  • 12色相環を3等分した配色をトライアッドという
  • トライアッドの中でも最も鮮明なのは、イエロー、レッド、ブルーの配色である
  • また3色の位置が幾何学として二等辺三角形になるのをスプリットコンプリメンタリーと呼ばれ、ブルーバイオレットとレッドバイオレットの中央にイエローを挿入するのはその例の一つである

4色調和(テトラッド)

  • 12色相環を4等分、つまり色相環の2つずつの色を結ぶ交点が直角をなす2組の補色体になっている配色
  • また長方形で結ばれる4色の配色をテトラッドと呼ぶ

6色調和(ヘグサッド)

  • ヘグサッドは3つの補色体で調和をとる配色、もしくは2つの補色対に白と黒を加えた配色である

ファッショントレンドに多用される類型

  • ファッション業界では一般用語と業界レベル用語を区別できない状態にある

トーン(色調)

  • トーンはJISでは規定されておらず、PCCSによると明度と彩度の複合概念となっている
  • PCCSのトーンとビレンのトーンは異なるので注意が必要
  • パステルトーンのようにファッションではカラーオーダシステムの尺度を超えて使われるものがある

トーンオントーン

  • 淡色から濃色へ、または濃色から淡色へと同系の色の濃淡でまとめるものをトーンオントーン配色という、通称同系色濃淡と言われる
  • トーンオントーンの特徴をもつものに奈良時代の彩色法として、仏像、織物、美術工芸品、さらに社寺建築、畳の縁などに用いられた繧繝(うんげん)がある、トーンオントーン配色は必ずしもトーンの概念図の隣同士を連続させなくてもよいが、繧繝配色は隣接するトーンの連続がセットになっている、この繧繝の技法を用いて京都、東山の高台寺の開山堂や霊屋の柱上部、枡組には赤、緑、赤の彩色が施され美しい配色になっている

トーンイントーン

  • 濃淡を同じにして色で差をつけるのをトーンイントーン配色という
  • トーンイントーン配色では、フランスの女流画家マリー・ローランサンの夢見るような女性の描かれた画面や、ロシア生まれの画家マルク・シャガールの描いた鮮やかな画面などが有名であり、デパートのベビー用品売場でもトーンを揃えて色みで変化をつけたトーンイントーン配色が見られる

ドミナントカラー

  • 多色で統一感がない場合に全体をある色で覆うとか共通な色みにする配色法をドミナントカラー配色という

ドミナントトーン

  • ドミナントカラーのトーン版で、色ではなくトーンを支配的に統一した配色をドミナントトーン配色という

トーナル

  • トーンに中明度、中彩度のダブルトーンの色を用いた配色をトーナル配色という

カマイユ

  • 単一色のいくつかの色調変化で描く単彩画法のこと
  • 配色としては色相、明度、彩度ともに微妙な差しかない色同士を使い、遠くからみると同一色に見える配色

フォカマイユ

  • カマイユと同類型にしてもよいが、フランス語の形容詞faux(誤った、偽りの、見せかけの)がついている
  • カマイユに比べて色相で微妙なずれを感じる配色の場合に区別される

コンプレックスカラー

  • 自然界では明るい部分が黄色みに、暗い部分が青や紫みに知覚されているが、これとは反対の組み合わせ、つまり暗い黄色と明るい青や紫を組み合わせた配色のこと

表色体系による類型

  • 配色の類型のしかたはさまざまあるが、表色系を活用すると、客観的な配色類型が求められるというメリットが生まれる、表色系はそのものが定量的に構築されている関係で、その体系上に配色されている色を位置づけると自ずと配色の相互関係も定量的に類型化でき、あいまいさがない分類になる
  • 表色系を使った分類は活用しやすい一方で一般生活者には応用する機会が少ないので日常用語として慣用されるには至っていない

色の三属性に対応させた配色類型

  • 色の三属性に対応させた配色類型は、同系配色、類似系配色、対照系配色と大きく3つに分類でき、その中でもムーン-スペンサーの色彩調和論による表現は同一配色、類似配色、対比配色の3つでありこれらの調和領域に加えて、不調和の範囲を設定して、第一不明瞭、第二不明瞭、明度関係のみに眩輝といった用語を加えている

色調に対応させた配色類型

  • 色調に対応させたものは、トーン・オン・トーンや、トーン・イン・トーンなどで、PCCSやフェイバー・ビレンの概念図にも示される

オストワルト表色系による配色類型

  • 表色系の中で回転混色の色円板上の色面積を変化させて混色した時に見える色をシステム的に体系化したオストワルト表色系の配色類型は、それを基にしたカラーハーモニーマニュアルに見られる

カラーイメージによる配色類型

  • 色の情緒性といった心理的な側面から、感情表現に用いられる配色用語もある
  • 特にファッションイメージと結びつけて、ロマンチックな配色、シック、クラッシック、スポーティ、フェミニン、マスキュリン、ナチュラル、エコロジカルな配色などといった表現が用いられる
  • ただし専門分野のイメージやテーマに即しており、主観的な性格が強く色と色の相互関係を類型として確立することは難しく、さらに色のみではなく形や素材を含めて総合的に判断する必要もある

配色の構成要素

  • 環境色彩デザイン、建築、インテリア、設備機器、生活要因からポスターなどのグラフィックに至るまで、これらのすべてのものは配色という2色以上を用いて構成する色の組み合わせからできている。これらの配色の構成要素は共通した法則性があり、主に面積比に比例する

  • 基調色(base color)は一般に配色の対象で、地色や背景色になりやすく抑えた色が多い

  • 主調色(dominant color)は用いられる配色の中で最も出現頻度、面積の多い色で、全体の色調に栄光を及ぼし、同系色や類似色と同化してなりやすい色、主調色は統一感のある印象を与える
  • 従属色(assort color)はサボーディネート・カラーとも呼ばれ、主調色に次いで面積の多い、出現頻度の高い色で、通常、主調色を補佐する役割を持つ
  • 強調色(accent color)は面積的には小さいが、配色の中で最も目立つポイント色、全体色調を引き締めたり、視点を集中させる効果がある

配色のパターン

  • バランスとは視覚的に釣り合いがとれているか否かで左右対称をシンメトリー、非対称をアシンメトリーという
  • 比例、比率、割合のことをプロポーションという
  • 視覚的な繰り返し、規則性をもつ線としてリズムを感じることがある
  • 反復現象をレビティション、交替反復をオルタネーション

ユニティ

  • 統一の原理のことで全体を校正する諸部分には何らかの共通要素と再部分が存在し、共通部分が少ないと対立を生みやすく、差異要素が多いと多様性につながる、基調色、主調色、従属色、強調色の関係を生かし、秩序を保つこと

エンファシス

  • ある部分を強調したり目立させること
  • カンディンスキーが好んで用いた概念で、膨張、張力、中などの意味を持つシュパヌングに通じる
  • 通常エンファシスでは同系色の強い色でさらに強めるか、まったく反対色によって異質効果としての目立を狙うかがデザインのポイントとなる

ハーモニー

  • 全体の調和や融合、バランスを持つ配色で類似、共通要素を中心に構成された配色
  • ハーモニーはギリシャの女神ハルモニアに由来し、争いの後の和解と解釈されている

コントラスト

  • 対立するものを強調するのがコントラストで、全体を二つにわける2分法と、全体をおり細かく分解し、類似する度合いに応じて順序づける段階法がある、前者は白と黒、赤と緑のような正反対の性質が配される対比で、個性的な感じや強い印象を与える

テクニック

  • 配色のテクニックにはグラデーション、セパレーション、バンラスポイント、バリューとキーなどがある

グラデーション

  • グラデーションは自然界の色や形のいずれにも認めれる方向性を持った規則性のある階調のことである、例えば自然界の緑の陰影に見られる色変化や、虹色に見る色相の序列などである
  • グラデーションには自然な流れとリズム感が生まれるため心地好く、色相、明度、彩度、トーンのすべてにおいて適応される

セパレーション

  • セパレーションは分割や分離の意味で、配色の接面に無性格色とされる黒白などの分割線を入れ、枠組み効果で全体が整理され内容が引き立つ

バランスポイント

  • バランスポイントは色同士が回転混色によって無彩色の灰色になればそれはバランスのとれた配色であるという理論
  • 配色全体の色調感でもあり、涼しい印象をあたえるならバランスポイントが緑になるような配色、面積比を選べば良い

バリューとキー

  • バリューとキーは印刷や写真、あるいは絵画などの画面構成時に用いられる配色の明度関係についてで主調色に対する明度差に応じてさまざまな種類がある
  • 低明度の配色をローキー、中明度同士をインターメディエイトキー、高明度をハイキーと呼び、さらに明度差3以上をマイナーキー、5以上をメジャーキーと呼ぶ
  • ハイメジャーキーの配色は明るく、明快な印象になる
  • ハイマイナーキーの配色は、画面全体は明るいが、沈静的でデリケートな配色となる
  • インターメディエイトメジャーキーの配色は、強く鮮やかな印象となる
  • インターメディエイトマイナーキーの配色は、弱く幻想的である
  • ローメジャーキーの配色は、重々しく威厳がある
  • ローマイナーキーの配色は、陰鬱な印象となる

カラーコーディネーションの実例

ファッションインテリア

  • ファッションコレクションの発表の場としては、美的表現を追求するオートクチュール(高級注文服、高級オーダーメイド服)と商業を目的としたプレタポルテ(高級既製服)がある
  • オートクチュールは、限られた個人客からの注文を受け、一点一点手作業で制作した服を顧客に渡すという流れであるが、プレタポルテは、基本的には卸売から大量受注して小売する流れとなる。

オートクチュール

  • オートクチュールとは、フランス語で高級仕立て服のこと
  • 美的表現を追求するオートクチュールは商業性が低いため注目しない業界人もいるが、色彩の使い方という点では優れたモノが多い

プレタポルテ

  • プレタポルテとは高級既製服の意味で、プレタポルテ・コレクションとしてはパリ・コレクション(パリコレ)が有名でパリコレといえば、プレタポルテ・コレクションを指す場合が多い
  • オートクチュールのブランドのほとんどが、プレタポルテも手がけている。
  • プレタポルテでは商業性が高く、時代の傾向を強く反映することが多い
  • あるデザイナーがコレクションで発表した作品に、花柄のブラウスにオレンジ色のスカートの組み合わせがあった、ブラウスの色はサーモン・ピンク、イエロー、イエローグリーン、白の4色でスカートの同色のオレンジは使われていないのだが、サーモンピンクとイエローが相乗して一見オレンジと同色相に感じるという、高度なバランス感覚のドミナント・カラー配色となっている、この例のように多色配色で使われている色を混色した結果できた色をバランスポイントという

商品の配色

  • 多くの人に好まれる白、黒、金、銀は商品の基本色で、モノトーンに金属色の二色配色や有彩色と組みあわせてつかうことも有効である

  • 奥行わずか5cmの薄型テレビは置き場所に制約がないので、壁にかけたり、フロアスタンドで部屋の中央におくこともできる、このような商品にはリアパネルの色を選べるものもあり、たんなる背面ではなく、インテリアの構成要素としてリアパネルを組み合わせた全方位デザインとなっている

  • リアパネルの例などでは、パネルカラーの一つは「クリスタルグリーン」という透明ガラス色のアクリルを使用した明るくシンプルなインテリアに合うもの、他は突き版で、ブルーの染色の上に光沢塗装のピアノフィニッシュでモダンテイストのもの、ブラウンの木目で重厚な家具やインテリアと調和するもの、ライトブラウンの明るい木目でナチュラルをはじめ、幅広いイメージのインテリアに似あうものがある、どの色もフレームのアルミニウム素材と対比されて新鮮さを出している
  • ピアノフィニッシュとは、楽器のピアノによく見られるような光沢があり、平滑な塗装仕上げのことである
  • 藤や木材、麻などはアジアンエスニックをコンセプトとするコーディネートに多用される素材である、藤や木材、麻などに共通する素朴さあたたかさのイメージは自然の表情を生かしたハンドクラフトとして多くの愛好者を増やしている、特に東南アジアをモチーフにしたものでは、色彩の中心は褐色で、インドネシアのバティックプリントでも最も典型的な色は藍色褐色である
  • ハーブや石鹸などを取り扱う店のディスプレイは、色とりどりのパッケージが密集していながら全体調和が図られていて統一感が感じられる、その大きな要因は照明効果から生まれる空間全体を覆う中間色のトーン・ドミナントと面積の大部分を占めるブラウン系の色彩である、ハーブの産地、南仏プロヴァンスをイメージした素朴な色にマッチした素材感の材料を配し、店全体が一定のイメージでといういつされている、全体コンセプトに沿ったイメージの統合を素直に表現したものである

  • コンポラリーデザインでは、斬新な表現をねらうものが多く、過激になりがちだが、わかりやすい表現を目的とする場合では全体コンセプトに整合する形、素材、色を使用することで調和感をうむことができる

  • 缶ビールのデザインでは色みが琥珀色、黄色、黄土色を選ぶ人が多く、ピンクみ、緑みを帯びたものは少ないし、や青の色で缶ビールを想定する人は皆無に近い
  • タバコらしさを意味するとしばしば使われた深い赤や青、濃い褐色は、ニコチンやタールの含有量の少ない商品に人気が移ってからは逆に有害さをイメージする色に変わってきている
  • 寝室の例では、室内の面積の多くを占めるベースカラーは白と明るいベージュにして穏やかな調和を図り、椅子、ベッド下部、テーブル、壁面の額縁、ランプの脚部は低明度で統一し、ベースカラーに対して明度コントラストをつけることでシンプルで引き締まったイメージを演出できる、またカーテンのブラウンが重要なアソートカラーになり、明度コントラストの調和がもたらすシャープで無機的な表情を和らげ、穏やかな暖かさを与える