時間との戦い

先日待ちぼうけを食らっても何とも思わない自分がいることに気づき、ふと思い出した。ソニー在職中、プライベートで待ち合わせに相手が遅れてくると必要以上にストレスになったことがあった。なぜか。それは仕事で時間に追われる毎日だったからだと思う。待たされている間は仕事で時間に追われながらやっとのことで作ったプライベートの時間をなぜこうやって無駄にされないといけないのか、そんな風に考えるようにまでなってしまっていた。そうなってしまったのは時間との戦いになってしまっている商品開発に原因があると思う。

商品開発の際におしり(締め切り)が決まっていることが多々ある。これでは「こういうものが作りたい」ではなく「いついつに出せるものを作らないといけない」というように目的が変わってしまう。そして、おしりが決まっているのに見積もりをしないといけないという矛盾が起きる。見積もりした結果、帳尻合わせをするように機能を落とすことになる。何かがおかしい。

もっとも時間に追われるのはソニーに限ったことではないし、とにかくものを世に出すときに締め切りはつきものであると思う。ワールドカップやクリスマスシーズンなどの時期や、競合他社との発売時期とのタイミングなど、締め切りが重要になることは多い。ただそれが度が過ぎてもいけない。なぜか三ヶ月のスケジュールが待てない。本当にお客は三ヶ月の商品も待てないのだろうか?本当に欲しいものなら待てるはずだ。けれど三ヶ月単位で次々と商品を開発してリリースしてしまう。それが不具合が多い状態であっても、機能が十分になくても・・・だ。

納得のいく状態じゃないのに商品を出し、結果としてユーザから大きな賞賛は受けない。社員は疲弊する、そんな状態で良いものは作れるはずがない。けれどそんな状態でまた短期間に次の商品を作ることになる。この負のサイクルが幾度となく繰り返される。

自分が辞めるきっかけになったあるプロジェクトも「この日に出さないといけない。スケジュールはもうずらせない。とにかくやってくれ」というような状態で開発し続けて、無理矢理商品は出せたものの、納得いく状態で商品を出せなかった。結局、そのプロジェクトは続かなかった。

ソニーにはユーザに三ヶ月待たせても、これでどうだ!と納得できるものを世に出せる環境が必要だったと思う。ソニーは他社の動向なんかに気にしてスケジュールを決めて良い会社じゃない。作り手が納得いくまでものを作り続けてから商品を世に出して欲しい。それができない限りソニーという看板を下ろして社名を変えてただの大企業になってくれと言い続けないといけない。